「ためらい」を断つ

投稿日:2012年12月29日

日本人が異文化の人々と交わる場で後れを取らないためには、言語を磨く(多くの場合英語になるでしょう)ことは必須ですが、それ以上に大切なのは、如何にして「ためらい」の気持ちを断ち切るかです。今回のブログでは、まず日本人の「ためらい」について考え、続いて未来塾の訓練がその断ち切りにどう役立つかを見ていきます。

先月26日付の朝日新聞(求人広告欄)で、脳科学者の中野信子さんは、フランスのある研究所におけるご自身の勤務体験を基に、次のように述べています。「戸惑ったのは、たとえくだらないことでも皆がすぐ発言するということ。私は日本人的な感覚で、これを言ったら馬鹿にされるとついためらってしまう。その一瞬のためらいが差をつけます。」

日本人であれば、誰しもこの種の「ためらい」を理解できるはずです。出席者が全員日本人であれば、その場の雰囲気を見てから手を挙げ発言を求めても、十分間に合うでしょう。しかし、欧米の大学や研究所では、またたとえ留学先や赴任先の地域社会の集まりなどでも、「ためらい」がプラスに働くことはありえません。「ためらい」により、あなたの存在が限りなく無に近づく公算大です。

当塾の発音訓練の初期段階では様々な困難に直面します。おそらく最も大変なのが、アタック(*1)、つまり息と声を一塊のようにして同時に出すことだと思います。アルファベットでは A とか I に顕著ですし、文であれば冒頭の出だし部分です。日本語を母語としている者にとって、瞬時に息と声をタイミングよく出すことは至難の業ですが、英語のリズム作りには必須です。そのため「ためらい」は許されません。明快な英語音を獲得するには、嫌でも「ためらい」克服に挑戦せざるを得ないのです。

初級コース半ばから、日本語でのディベート導入訓練(*2)が始まります。いきなりディベートの試合をするのでなく、ディベート手法を使って、段階的に(英語で要求される)論理思考法を学びます。段階的なプログラムではありますが、各課題では全て時間制約の中で処理が求められ、「ためらい」とは無縁です。自分の番が来れば、たとえ頭真っ白状態でも、発言しなければなりません。そして、ディベートの試合であれば、自分の所属チームを代表しての主張展開が必要なため、その役割全うのためにはためらってなどいられないのです。

日本人である限り「ためらい」の根絶は難しく、その必要もありません。必要な時「ためらい」を断つ、すなわち制御ができればいいのです。それは誰にでも可能で、個人差はあっても、当塾の初・中級合わせた8か月ほどの訓練で、かなりの成果をあげられると自負しています。

過去の参考ブログ:
(*1)「アタック」(2010年8月25日掲載)

(*2)「ディベート導入訓練」(2011年4月30日掲載)

<ナガちゃん>