Bat, Cat, Map, Apple, 発音上の共通点は何でしょう?

投稿日:2012年6月24日

上記設問に対する答えは、各単語に入っている文字 a の発音です。すなわち、発音記号 [ae] で表示され、a 「ア」と e 「エ」の中間的な音とされるものです。さて、今回のブログで述べたいことは、ここからスタートします。多少変則的な展開になりましたが、ご容赦ください。

 

まず、未来塾のレッスンでは発音記号を一切使いませんが、この a と e の中間音も採り入れていません。通常の a 「ア」で発音します。何故でしょうか? それは、日本人の口形にこの中間音がそぐわず、無理に出すと首を絞めつけられたような、潰れた耳障りな音になるからです。

 

日本人の口形は白人に比べ、おしなべて周りの肉がたっぷりしているため、左右、横に広がりやすいこと。また、日本語の場合、子音単体での鋭い音が存在しないため、日本人が上記の単語を発音すると、どうしても a の母音部分の音程が高くなること。このような肉体的、音声的な違いがあるため、a と e の中間音ではなく通常の a 「ア」で発音した方が、誤解を招かない、聞きやすい音を作れると考えます。

 

上記に述べた「耳障りな音」の具体例として、わたくしの個人的な体験を一つご紹介します。都内の電車の中、放送が流れました。録音テープで、同じ日本人が、まず日本語で、続いて英語でアナウンスしたものでした。主要駅に近づき、鉄道各線への乗り換え案内で、接続詞 and が数回使われました。「~線~線」への乗り換えと言う意味です。and の冒頭部分が発音されるたび、「ぎゃー」といった悲鳴に近い音声が発せられます。たかが接続詞に何事か、と思いました。多分、話し手の頭の中には、and の冒頭は aと eの中間音で出すべきとの概念があるからではないかと想像した次第です。

 

未来塾では、日本人の顎骨など肉体的な特徴を考慮し、また(息や子音といった)日本語の発声との違いを前提に、発音記号には頼らずユニークなやり方で英語の音作りを訓練します。今回取り上げた a と e の中間音の他に、子音の  w、 f と v,  th などの作り方にそのユニークさが顕著に表れていると思います(*)。

 

* W と TH については下記ブログをご参照ください。
「野獣の唸り、W音」(2011.2.10掲載)
「鏡が曇るTH」(2011.7.9掲載)

<ナガちゃん>

音と息の規定量

投稿日:2012年6月9日

規定量とは何かが今回のテーマです。テキストには「音と息の規定量を満たす」といった表現で出てきます。4月に初級が開講し、アルファベット26文字の音の作り方を終え、単語を経て、ようやく文章に入りました。詩を使っての音声表現のレッスンです。ここで受講生に求められる条件の一つが、この「音と息の規定量を満たす」ことです。

 

各受講生は、テキストで課題として掲げている16篇の詩から一つを選び、自分なりの解釈に基づきその内容をこれまで練習してきた音作りを生かして表現します。その際、他者(トレーナーや他の受講生)が内容を把握し理解できるに足る、「音と息の量」を備えている場合、その音声は「規定量を満たしている」ことになります。言うまでもなく、この規定量には純粋な意味での物理的な尺度(例えば、何々ヘルツといったような)はありません。

上記で「音と息の量」と言いましたが、日本人が英語の音声表現を行う場合には、「息」の重要性を強調しておく必要があります。特に子音です。息の伴わない子音は考えられません。そもそも日本語では母音と子音が一体となっていますので、英語の音作りを学ぶ際に、母音と子音を分けることから始めなければなりません(*)。その上で十分な息の量を伴って、それも瞬発的に強く、鋭く出す必要があります。

息の使い方について、課題の詩の一つ“SING”を例に述べてみます。この詩の冒頭は“Sing, sing a song”です。これを一拍(息)で発音しますが、体内に取り込んだ息の半分を最初のSingに使うと言っても過言ではありません。それも大半を初めの S に注ぎます。その息の勢いで、後に続く短母音 i を出し、子音の ng に繋げます。カンマ以降の sing a song を残った半分の息を使って作りますが、ここでも最初の s に残りの息の大半を注ぎます。

 

真似でなく、自らの肉体を意識的に使って音を作るのが未来塾の発声・発音の大原則です。さらに、「他者へ届く音声」、すなわち、「音と息の規定量」についても常に留意できるようになると、加速度的に発音が上達していくことでしょう。復習として録音した訓練内容を聞き直す際にも、規定量の観点からのチェックは勿論欠かせません。

 

(*)「母子分離」(2010.9.10. 掲載)

<ナガちゃん>