コメント出しの舞台裏

投稿日:2012年1月27日

コメントとはトレーナーが受講生に対して出す指示やアドバイスのことで、通常はレッスン中に口頭で行いますが、今回取り上げるのは文書の形で出されるものについてです。現在中級生は最後の課題として自作文に取り組んでいて、予定された日程でのレッスン以外に、次のレッスンまでの合間に自宅で書き直した原稿をメールに添付して提出します。それに対して、わたくしたちトレーナーはコメントを付けて返しますが、どのようなプロセスを経てコメントが準備されるのか、そのいわば舞台裏を紹介したいと思います。
 
自作文のレッスンは全部で5回、10時間程です。「わたくしの大好きなもの(こと)」または「わたくしの大嫌いなもの(こと)」について、3分程度のオリジナル・スピーチを書き、口頭発表の練習をして、中級コース最終日に発表するものです。基本的なステップとして、受講生はまず日本語で原稿をつくり、可能であればそれに基づく英語版も作成した上でレッスンに臨みます。教室では最初日本語版を口頭でやってみます。もし構成や内容面で問題がなければ、英語の方に移行できますが、普通は日本語版で数回書き直し、その後の英語版でも数回の書き直しが必要となります。
 
さて、各受講生から送られてきた原稿に対するトレーナー側の対処についてです。現在の中級クラスの受講生は6名で、他方トレーナーは5名ですので、最も簡単な方法は、各トレーナーが受講生一名を分担し(一人だけは二名となります)、コメントを付けて返せば、おそらく2日程で対応が可能でしょう。ところが、わたくしたちはそのやり方をとりません。各トレーナーは受講生全員の原稿に目を通し、自分のコメントを出します。すなわち、今年の場合、6 × 5の計30個のコメントが全部で揃います。
 
トレーナー側はあらかじめ受講生毎にコメントの取りまとめ役を決めておきます。自分がまとめを担当する受講生について、自分を含めて出された5個のコメントをよく検討し、重要な指摘やアドバイスを落とさないように注意を払いながら取りまとめます。そして、そのまとめた内容をトレーナー全員で再度確認した上で、各受講生へ返却します。
 
何故このような一見まだるっこしい方法をとるのでしょうか。その理由について、わたくしは次のように考えます。すなわち、5人のトレーナーが各自コメントを出すことで、同じ一つの自作文草稿に対して、より広く深い見地から問題点を洗い出すことができ、さらには改善点についても同様な見方に基づく提言やアドバイスを受講生に提示できるからです。また、互いのコメントを確認し合うことで、各トレーナーが自身の思い込みや視野の狭さに気づくこともできます。
 
さて今回のまとめですが、受講生同様、各トレーナーも自分の職を抱えていますし、家族との生活もあります。その中で上述のように計30個のコメントに関わるのは並大抵ではありません。少なくとも休日の丸一日は返上です。活動を続けているのは自分自身の訓練のためでもあるとはいえ、かなりハードです。それを最終的に癒やしてくれるのは、各受講生の最終発表の成果に他ありません。

<ナガちゃん>

バッサリ切り捨てる勇気を持つ

投稿日:2012年1月16日

新年あけましておめでとうございます。今年の元旦の計は何か立てられましたでしょうか。今年こそ英語の発音を磨きたいとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。また、何らかの形で留学や海外での仕事を計画されているかもしれません。私どもも引き続き、日本人が異文化の壁を乗り越えて、意思疎通を図るに必要なスキルを身につけていただける様、訓練プログラムを提供して参ります。
 
今年も昨年同様に2月と3月にそれぞれ一回ずつ体験レッスンを実施します。申込方法等はこのHP上に記載されています。ご関心がお有りになれば、お気軽にお申し込みの上ご参加ください。お待ち申し上げます。
 
さて前置きが長くなりました。まず今回のテ-マについてですが、新年早々少し物騒な響きのある「バッサリ切り捨てる」対象は、スピーチの草稿です。推敲した原稿を読み上げると5分かかるが、発表に許される持ち時間が3分といった場合に必要となるのが、この「切り捨ての勇気」であるとわたくしは思います。
 
ある夏の未来塾合宿でのわたくし自身の体験を述べます。既にトレーナーの見習いになっていましたが、久しぶりに自分の訓練として、ブックレポートと称するレッスンで発表する準備をしました。これは、かつて初級段階で行われたもので、ごく簡単に言いますと、本を自分で選び、教室で塾長を含めた聴衆に対して、本の内容を概要と所感に分けて、口頭で紹介するものでした。日本語で行います。いかにも簡単に聞こえるかもしれませんが、やってみると大変で、発表者の3人に2人は不合格となるのが常でした。
 
さてわたくしの草稿ですが、持ち時間5分に対して、実際に測ってみると7分以上かかりました。はじめはそのまま強行突破することも考えましたが思い直し、変わりにパラグラフ単位で2つほどバッサリ削除し、その上で少し補って本番に臨みました。結果ですが、パーフェクトではないものの、そこそこの出来であったと記憶しています。時間は5分で納まりました。その時の実感は「やってみれば何とかなるものである。バッサリやるのも一つの手だな」でした。
 
闇雲に削れば済むとは言いません。いつでも通用するやり方でないかもしれません。でも、自分の書いたものに執着する傾向は誰にでもあるのではないでしょうか。前回も触れましたが、今中級生が取り組んでいるのは自作文作りで、日本語の原稿を基に英語に直していく段階です。標題の「バッサリ切り捨てる勇気を持つ」ことは、草稿内容をさらに詰めていく手段として意外と有効であり、是非試してみるべきであると信じて疑いません。

<ナガちゃん>