担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
先日、沖縄で一人暮らしをしている娘から電話がかかってきました。最近携帯電話のショップに勤め始めて、土地柄米軍関係の方が多いのか英語で対応しなければならないことがあるようです。発音をチェックしてほしい、というのです。
「この間、アメリカ人のお客さんの携帯が水でダメになっていて、“ウォーター・ダメッジ”って何度言っても通じないみたいで、そばにいた長年日本にいる別のアメリカ人のお客さんが “water damage” って言ってくれて、ようやく通じたの。」
これに対し、私は「ウォーターはwaterじゃないよ。Wの音が出ていないから、相手には何のことかわからなかったんじゃない?」と言って、しばらく即席でWの音のつくりかたを練習させました。
娘とやりとりをしながら、私は別のエピソードを思い出しました。
私は小さな子供たちに英語を教えていますが、コースが始まる前に保護者の方々に説明会を開いてご理解を頂いています。その中で発音の重要性もお話しするのですが、ある時、Wの音を例にとって、いかに英語音と日本語の音が違うかを実際に音を出して説明をしました。
すると、参加されていたあるお父様が、いきなり、「なぁんだ、人種差別ではなかったんだ!」と叫びました。お話しをうかがうと、「ある時、アメリカへ向かう飛行機の中で、水が飲みたくなり、フライトアテンダントの方に“ウォーター プリーズ”と言ったんですよ。そうしたら、コーヒーが運ばれてきたんです。それで、“ノー、ノー。ウォーター、ウォーター”と再び言うと、今度はコーラを持ってきてくれました。てっきり、僕はこりゃ人種差別だわ、とちょっとめげましたよ。ただ、Wの音が届いていなかっただけなんですね。人種差別じゃなかったんだ。」と苦笑いをされていました。
英語の子音の中には日本語にはない音がいくつかありますが、Wもその一つです。しかも、waterもそうですが、重要な単語や固有名詞の語頭によく出てきます。多くの人は、waであれば、「ワ」で、その他は「ウ」で代用しているのではないでしょうか?
Wの音は、まず、ほっぺたをいっぱいに膨らませて、口の中に空気を満杯にして、唇に力を入れ、合わせた唇を中心の小さな隙間から息と声でこじ開ける、といったイメージで出します。それだけ聞いたらオオカミの唸り声のような音です。
娘も電話の向こうで何度か挑戦しましたが、なかなか思うようにはいきません。「むずかしいね、W。」それでも、赤ちゃんオオカミくらいの音が出るようになったので、「ウ、で代用しないで、唇をしっかり引き締めて出すだけでも違うんじゃない?あとは、練習を続けるしかないね。」と言って電話を切りました。その後、練習をちゃんと続けているかな?
<イノモン>