メガフォン型口形

投稿日:2010年6月26日

メガフォン型口形(以下単に「メガフォン口形」)とは、未来塾の発音訓練で使う基本的な口の形で、形状は四角です。口形をつくる上下の唇全体に力が入っていますが、特に左右両脇の引き締めが強いです。メガフォン(拡声器)を正面から見たときの(四角い)形に似ているので、メガフォン型口形と呼びます。楽器のラッパにも似ているので、ラッパ口形ともいいます。未来塾のテキストでは、アルファベット26文字のうち半分以上について、このメガフォン口形を使って音作りをするよう言及されています。
 
何故メガフォン口形を作るのか、その主目的は、口の両脇の横開き防止です。横開きを制御しない場合、どのような問題が起きるでしょうか。
 
わたしたち日本人の口元は、欧米人(白色人種)と比べ、肉がたっぷりしているため、例えばアルファベットのEなどを発音すると、口形が横に大きく開いた状態になります。口形が元に戻るまでに時間がかかり、連続的な音作りが容易ではありません。たとえ試みても、テンポがずれ、リズムがくるいます。
 
逆の言い方をすると、メガフォン口形を作り口の両脇を強く引き締め、横への開きを制御すると、次のようなメリットが得られます。
 
① 舌力アップ
舌の根に力が入り、英語音が作りやすくなります。例えば、アルファベットTの(舌先と上の歯茎で作る)破裂音を強く出せますし、Rの場合には、舌を巻きあげた状態での音作りがしやすくなります。
 
② スムーズな口形移動
メガフォン口形を起点として、文章の音声化に必要な連続的な音作りができます。
 
③ 息の効率的活用
口が必要以上に横に開かないので、息漏れ(息の無駄使い)が防げます。
 
④ 息と声の方向付け
息と声が前方に発せられるため、相手(聞き手)に届きやすくなります。
 
メガフォン口形を習い始めた頃、わたくしは自分の唇でメガフォンをつくることに抵抗がありました。いかにも人為的で、しかも形が醜く感じられ、やりすぎると口の形が元に戻らなくなるのではといった恐怖心すらありました。
 
何時ごろからメガフォン口形への抵抗感が薄らいできたか、よく覚えていません。はっきり記憶しているのは、海外出張先のホテルで、CNN Newsを見ていたときのアジア系女性アナウンサーの口元です。メガフォン口形そのものでした。縦に開きはするものの、横には殆ど開かず一定で、次々と原稿を読み上げていきました。効率よく音作りをするには、特にわたしたち黄色人種のような場合、やはりそれなりの工夫が必要であり、だからメガフォン口形を利用しない手はない、と腑に落ちた一瞬でした。二十年近く前になるでしょうか。
 
最後に、最近これぞまさしくメガフォン口形実践者?と感じた人について一言。それはSuzan Boyleです。昨年一躍世界的に有名になったイギリスの女性歌手です。彼女が歌っているとき、少なくともわたくしが見た(NHKの)テレビ番組では、口形がメガフォンそのものでした。口を縦には開けるものの、横幅は保持されていて、終始殆ど変わりませんでした。
 

<ナガちゃん>

日本語で伝えられないなら、英語でも伝えられない

投稿日:2010年6月19日

初級コース、12回中の9回目に「ニューズレポート」という英語ではなく日本語で発表する訓練をします。何故、英語で、ではなく、日本語で、なのか? それは日本語で言いたいことを伝えられないなら、英語でも伝えられないという現実を未来塾はふまえているからなのです。
 
「ニューズレポート」では、あるテーマについて書かれている日本語の記事を読み、記事の概要と自分の意見をまとめ、3分間で日本語で口頭発表します。
 
「英語を学びに未来塾に来たのに、なんで今更、英語ではなく、日本語でやるのか?」と、中津塾長の時代に、このレッスンの前身である「(*)ブックレポート」訓練を受けた時、私は疑問を感じました。
 
しかし、塾長から、訓練のねらいが、自分の言いたいことを聞き手に分かるように整理すること、自分の意見を表明することであると説明を受け、なんとか覚悟を決めて取り組みました。結果は発表を時間内でおさめることは出来ず、以下のコメントをもらう有様でした。
 
「本の内容を整理できてないので、聞き手によくわからない」
「著者の意見に同調するだけで、意見ではなく感想を述べている」
 
手厳しいコメントでしたが、良い経験をしたと思いました。なぜならば、自分の言いたいことをまずは母国語である日本語で聞き手に分かるように整理して伝えられなかったら、また自分の意見を母国語である日本語で言えないのなら、いわんや、外国語である英語で出来るはずがない、ということに気づいたからです。
 
それから自分が日頃、いかに聞き手が分かるように伝えていなかったのかが分かり、言いたいことを聞き手の立場に立って整理するように意識し、自分の考えを持つように努めました。そして、仕事(輸入事務)で、英語でやりとりしなければならない時、まずは、伝えたいことを日本語で整理してから、英語にするようにしました。おかげで、以前よりも、ファックスやメールなどの英文をつくるのが手際よくできるようになり、また、相手から聞き返されることが減ってきて、通じた、と感じられることが多くなってきました。
 
日本語で伝える訓練は、“通じる英語”に近づくために有効であると実感しています。 

 
(*)ブックレポート:中津燎子が塾長だった時代に未来塾で行っていた日本語による説明訓練。日本人や日本文化について書かれた本を一冊読み、概要と意見をまとめ、5分間で口頭発表する、というもの。

<オサリン>

「直下型」は地震だけではない

投稿日:2010年6月15日

英語の基本的な発音も直下型です。そのように未来塾では訓練します。
但し、ここで言う「直下型」とは地震と同じ意味ではありません。音を「真下に下げる」意味で、いわば象徴的に使っています。
 
例えばアルファベットの二番バッタ-である “B”。上下の両唇を強く破裂させて作った音を、息を利用して一気に下げます。一気に下げながら後半部分を作ります。イメ-ジとしては、超高速エレベーターで真下に急降下する感じです。
また、レッスンでは、通常、逆三角形をイメージ図として用います。
 
単語になっても同じ要領です。未来塾のテキストにはカタカナになりやすい単語を108個選んで練習しますが、その最初の単語はPARKです。Pで破裂(子音だけで、母音は一切入りません)、一気に下げながらA+R+Kと連結させていきます。音の上ではPの真下にAが来て、その真下にR、その真下にKが来る感じです。
 
文章は通常いくつかの単語から構成されます。ここでも上述の要領で訓練します。例を取ります。未来塾で使用しているスピーチ訓練のテキスト、チャップリンの「独裁者」の出だしの部分です。
 
We all want to help one another. Human beings are like that.
 
We で始まり、一気にanotherまで落とします。流石に文の場合には直下型というわけにいきませんが、勢いやイメ-ジとしては、同じです。 anotherまで繋げたら、次にthatまで、文と文の切れ目無く音を連結させながら下げます。なぜか。理由は、それによって初めてWeから始まる文の内容が聞き手に伝わるからです。意味の上から、この二つの文は切り離せません。但し、息切れを起こさないために、anotherとHumanの間で軽く息継ぎをするといいでしょう。すなわち、anotherのあとのピリオドをカンマとみなして、素早く息を吸うわけです。
 
「音を下げる」、これは直下型か否かは別として、スピ-チで要求される言い切りの仕方を身につけていく訓練過程でもあります。

<ナガちゃん>
 

耳の力

投稿日:2010年6月6日

    
未来塾の発音訓練で最も鍛えられる身体の器官はどこでしょうか? これは、難問であり同時に愚問でもあります。個人差があるでしょうし、客観的に器官別の鍛錬の成果を測る基準がないからです。只、一つ言えるのは、舌や口周りの筋肉強化ばかりでなく、耳も鍛えられるということです。音を聞き分ける力といっていいでしょう。
  
アルファベット26文字の発音の仕方を習い終えると、早速アルファベット回しに入りますが、頼るのは自分の耳だけです。耳を澄まし、他の人が発した音を捉え、自分の順番がきたら間髪を入れずに出す。口を使うのは、この一瞬だけです。あとは、次に回ってくるまで、耳が主役です。
  
次に、カタカナになりやすい108個の単語の発音を習い終えると、早速単語回しをしますが、ここでも主役は耳です。この点、受講生は余り意識していないかもしれません。テキストには単語と絵がセットで示されていて、単語回しの初期の段階では、指で追っていくこともあります。それでも、主役は目でも口でもなく、耳です。他の人が発する音声に注意を集中させる事が大切です。
   
未来塾では「聞き流し」が許されません。例えば、詩やスピーチの発表の際、各受講生は自分の発表のほかに、他の受講生の発表内容に対して必ず感想をメモ書きさせられます。聞き流しをしないためです。たとえ、その中身が「良かった」の一言でもかまいません。できれば、どの部分がどのように良かったのかを述べられれば、もっといいわけです。
  
訓練を積み重ねる中で、何事も聞き逃さない、如何なる微妙な変化をも瞬時にとらえ分析できる耳の力が養われていきます。わたくしの場合、初級の後半(訓練をはじめて半年ほど)になって、話される英語の音が下がっていくのを、実際に耳でとらえることができました。テレビでアメリカ政府高官(女性)が話している時の体験でした。耳の力がつくことで、自他の音声表現を分析深くとらえられるようになり、結果として自らの表現の幅が広がります。財産としての耳の力です。
  
このブログの原稿を書いているときに「鳩山首相辞任」のニュ-スが流れてきました。そして、「国民のみなさんが徐々に徐々に聞く耳を持たなくなってしまった」という弁も。「聞く耳」とは何か。また一つコラムが書けそうです。でも、ここで述べた「耳の力」は、事実を事実として(感情抜きで)とらえ、しかもその話者の本気度をも見抜く(聞き分ける)力を意味します。そこまで音声は分析可能ですし、またそれだからこそ「耳の力」を鍛える価値があるのではないでしょうか。
  

<ナガちゃん>