発音50、文法50、内容200

投稿日:2011年12月29日

今回のブログのタイトルについて、これだけでは何を言っているか皆目お分かりにならない方が多いと思います。これは中津先生が晩年に講演会などでよく口にされていた表現です。私なりに解釈しますと、「英語で話をするとき、発音と文法はもちろん大切だが、最も重要なのはその中身である」ということになると思います。ここでの数字には特に科学的な根拠があるわけではありませんが、重要度の目安として捉えればいいでしょう。
 
発音と文法を合わせたもの(100)の更に2倍重要な中身とはどのようなものでしょうか。それは、伝えたいメッセージが明確であり、それが論理的にしっかり構築されていて、聞き手が納得いくに値する証拠付けができているということだと思います。このような中身を構築できるよう、未来塾では、「論理的思考の訓練」をプログラム化し、表看板の「発音」と共にもう一本の柱に謳っています。
 
ご承知のように、日本の文化的土壌としては、自己主張よりもむしろ譲り合いの精神を尊ぶ傾向があります。相手がどう思うか察して、それをあらかじめ考慮に入れて発言や行動することは昔ほどではないにしても、日本人にまだ根付いているのではないでしょうか。逆に言いますと、自己主張を抑えて相手方に自分の心情を察してもらうことを期待する、いわば相手への甘えを持つ傾向があります。日本人同士の付き合いであればそれで済むかもしれません。
 
いずれにしてもわたくしがここで強調したいことは、論理重視の欧米文化と付き合っていくには、そのような甘えは通用しないと考えるべきであり、きちんと自己主張する、言い換えれば論理的・客観的にものを考え、それを他人に対して説明する訓練が必要で、それもできるだけ若いうちにすべきであるという点です。そして手前味噌になることを覚悟で述べますが、ディベート手法を取り入れている未来塾のプログラムは、まさにそのような要求に応えると同時に、受講生が無理なく段階を踏めるよう工夫されています。
 
今年の中級生6名は、すでにディベート手法の訓練段階を終えて、現在自作文の作成に取り組んでいます。最後の、そして最大の難関です。自分を前面に出すこと、自らの主張を他人である聞き手に納得させるに足る証拠をつけて明快に述べることが求められます。ポイントは、如何に自分に引き付けて主張できるかです。他人事でないオリジナルの自分を示すこと、できそうで実際には簡単ではありません。残り三回のレッスンで何処まで進めるか、トレーナー側の期待も大きくならざるを得ません。そのため出すコメントやアドバイスの内容が時としてかなり厳しくなります。
 
皆様、良い新年をお迎え下さい。

<ナガちゃん>

中津先生の経歴〜9年毎の変節の不思議〜

投稿日:2011年12月11日

中津先生が今年6月に亡くなられ、その経歴を見て気づいたことがあります。それはほぼ9年を一つの周期として大きな節目を迎えられていく事実でした。大まかにその経歴を記してみます。
 
1925(大正14年)福岡に生まれる
1928~1937 ウラジオストック在住
1937~1945 日本に帰国し戦時下を生きる
1948~1956 GHQ(福岡)で電話交換手として働く
1956~1965 米国で暮らす
1965~1974 帰国し盛岡で暮らす
1974 『なんで英語やるの?』で第五回大宅賞受賞
1975~1982 発音研究会時代*
1982~1999 未来塾塾長
 
9年前後で生きる環境や活動の内容が変わっていくのがお分かりになると思います。こだわりすぎと言われるかもしれませんが、わたくしは単なる偶然と言い切ることに躊躇を覚えます。発音を含めた異文化対応訓練において、常に「変化」の重要性を述べられていた先生らしいと感じます。その経歴を通して、身を以てご自分の「変化」「変節」をわたくしたちに提示されている気がするのですが、皆さんはどうお思いになりますか。
 
わたくしは1988年の秋に入塾しましたので、それからの先生の動きはつぶさに存じています。上記の塾長時代は全体では17年ですが、1991年夏のロシア再訪を境にして、未来塾前期と後期に分けられるのではないかと、わたくしは感じています。前期は大阪での塾の立ち上げから、訓練の最盛期までの約9年、後期はその後閉塾までの約9年です。ロシア再訪の後先生は、ひたすら塾を閉じるタイミングを探られていた気がします。すなわち、塾長時代の期間についても、9年毎の変節が起きていると言えるのです。
 
今年2011年は間もなく終わります。3月の東北大地震、その影響でわたくしどもの訓練も一月遅れて何とかスタートしました。それから3か月後の6月15日に中津先生逝去の報に接します。更には、これは私的なことで誠に恐縮ですが、11月29日にわたくしは母を91歳3か月で看取りました。ここ5,6年はパーキンソン病等で最後の数か月を除き自宅介護を続けていました。
2012年、少しでも良い年になるように祈らざるを得ません。
 
発音研究会時代* :英語教師を対象に発音訓練活動をされていた時代

<ナガちゃん>