努力を要する“I Love You”

投稿日:2013年1月30日

今年もバレンタインデーが近づいてきました。義理ではなく、本物の愛の告白が少なからずあるに違いありません。今回取り上げたこのフレーズ、これは2月14日だけでなく365日いつでも有効です。しかもチョコに頼るのではなく、確実に自らの心情を相手に伝えることが可能です。

たった3つの単語からなる便利な表現ですが、発音上は易しくないという問題があります。これまでのブログの中で何度もカタカナ音から英語音への切り替えをどうするか、具体例をあげて説明してきました。今回、おさらいの意味も含めて“I Love You”を使って、多くの日本人がクリアすべき困難点を見ていきましょう。

設問1.このフレーズを構成する3つの単語の中で、最も起点となり、発音面で集中力が必要なのはどれでしょうか。もちろん、いずれも大切で意識的に音をつくらないとカタカナになってしまいます。しかし、全ての起点になるのは“I”です。自分の全人格が出せるよう、保有する息の半分くらいを使い、その息に声を乗せて出します(*1)。

設問2.次に Loveの発音について、何が一番大変と思いますか。わたくしは、 2番目のアルファベットOを挙げます。なぜか?それに答える前に、Lと V の作り方を見ていきます。L を作るには、上の歯の裏側に舌先を強く押しつけて音を出します。それには舌の根を強くする日々の鍛錬が欠かせません(*2)。V は下唇を硬くして、そのまま上の歯に押し当てて音を作ります。さて、前述のOについて、なぜ大変かですが、それは日本語にない短母音だからです。瞬間的に息だけで作ります。「ア」で代用を試みても、間延びして英語のリズムが刻めません(*3)。

設問3.最後のYou について、最重要ポイントは何でしょうか。それは口形です。未来塾では、メガフォン(拡声器)に似た口形を起点にして発音をする場合が少なくありませんが、この You もそうです。メガフォン口形から唇を素早く動かし、巾着を絞るようにして出します(*4)

設問4.以上ざっとですが、単語ごとに音の作り方を見てきました。只、未だ全体を通してとても重要なポイントが残っています。何かおわかりですか。そうです。I からYouまでを一拍で、あたかも一つの単語のように、一息で出す点です。そのためにも I の出だしの勢い(息と声とが一体となった)が、このフレーズ“I Love You”の命となります。「たかが発音、されど発音」、真摯な愛が相手に届くか否か、発音についても不断の日々の努力にかかっているといっても過言ではないでしょう。

参考ブログ
*1.「“I”を取り巻くバリア」(2012.5.28)
*2.「舌の力」(2010.5.9)
*3.「短母音は息でつくる」(2011.5.12)
*4.「メガフォン型口形」(2010.6.26)

<ナガちゃん>

“Dictator”と“I Have A Dream”、二つの課題文を比較する

投稿日:2013年1月14日

皆様、新年あけましておめでとうございます。良いお正月を迎えられましたか。
今年わたくしどもとしては、まず1月末までにホーム・ページのリニューアルを行います。続いて例年通り、2月、3月に体験レッスンを1回ずつ実施して、4月の初級コース開講を目指します。そして年内には、新テキストの編纂を済ませる予定です。本年もよろしくおねがいいたします。

さて、前置きはこれまでとして、本題に入ります。正月休み中に、かるた遊びを楽しまれた方もおいででしょう。今回は、当塾の課題文である “Dictator”と “I Have A Dream”(以下Dream)を使って、少しことば遊びをしたいと思います。それぞれのスピーチを構成する単語に注目、取り出して数の多い順に並べ、比較したのが下記の表です。

aaaaaaaaaaaaaDictator   Dream
men/man            16                0
free(dom)             4               16
I                           1             12
you                     12                1
ring                      0             12
us                       11                0
let                        6               11
dream                  0               11
one                       2                8
day                       0              10
every                    0                9
have                      2               9
we                         8               7
together                 1               7
machinery              7                0
world                     7                0
power                    7                0
mountain(side)       0                7
people                   6                 0
hate                      6                 0

まず、表示した単語についてですが、どちらかのスピーチに6回以上使われているものに絞りました。但し、冠詞、定冠詞、前置詞、接続詞、それに助動詞は含みません。また、単語を選ぶスピーチの範囲は、Dictatorの場合、”We all want to help one another.” から ”Soldiers, in the name of democracy, let us unite.” まで、Dreamは ”I say to you today, my friends,…”からスピーチ最後の ”Thank God almighty, we are free at last.” までです。つまり、当塾の訓練で使う部分に限定していることを念のため付け加えます。

この表を見られてのご感想は如何ですか。この二つのスピーチ、20世紀を代表するものであることは間違いありませんが、作られた年代や背景、対象とする聴衆等異なりますので、このように比較すること自体殆ど意味がないかもしれませんが、ことば遊びとしてお許しください。

わたくしが面白いと思ったのは、次の3点です。
(1) I と you について、一方のスピーチでは多用されるも、他方では皆無に近いこと。(只、これはDreamのスピーチが、聴衆すなわちyouへの訴えかけがないのではなく、冒頭で “I say to you today, my friends, ….”と言って呼びかけ、自らのdreamを次々に語りかけていくことは皆さんご承知の通りです)。

(2)(1)とは対照的に、weについては、DictatorとDreamともほぼ同じ頻度で使われていること。また、(人称代名詞ではないが)、letも双方で比較的頻繁に使われている。(後者について、Dictatorでは ”Let us fight for a new world….”のように、Dreamでは”Let freedom ring from….”と何回も繰り返されます)。

(3) 片方のスピーチの中で一方的に使用頻度の高い単語は、そのスピーチの骨格をやはり作っているように感じられること。例えば、freedom, every, together, mountain(side)などはDreamの骨格を、またmen/man, machinery, world, powerなどはDictatorの骨格を作っているというように。

最後、ことば遊びのついでに、リストアップした単語を使って各スピーチの要旨を表してみたいと思います。
Dictator: 「諸君、力を合わせ、機械のためではなく、人間が生きるに値する世界をつくっていこうではないか」
Dream:  「わたしには夢がある。(神が与え賜うた)自由を共に勝ち取らんことを。山々に、国の隅々に、その動きを起こそうではないか」

2013年、皆様一人ひとりにとって、より良い年となりますよう祈念して。

※参考ブログ
「なぜ未来塾のスピーチ訓練では原稿の暗記を薦めないか」の注記欄(2011年10月13日掲載)

「歴史的スピーチをお借りする」(2011年11月10日掲載)

<ナガちゃん>