「口形移動」って何?

投稿日:2012年3月24日

口形移動とは簡単にいえば口の動き、それも連続的な動きのことです。会話でもスピーチでも、話し手は次々に音を発していきます。会話やスピーチ上手になるには、やはり口が回る状態、すなわちスムーズな口形の移動ができるかどうかが一つのポイントになるでしょう。
 
以前のブログでメガホン口形について述べました。口の両脇を横に広がらないよう保持し、メガホン(もしくはラッパ)の形にして前へ突き出すことで、息漏れを防ぎ、声を相手に届かせ易くなります。メガホン口形にはもう一つの利点があり、それがスムーズな口形移動もたらすという点なのです。常にメガホン口形に基点を置くことで、口が横に広がりすぎないため、次の音に必要な口形を作り易いのです。
 
メガホン型一発だけでも用を足せる場合もあります。例えばTeaは、音としてはアルファベットのTと同じですので、Tの作り方をそのまま応用できます。すなわち口形は終始メガホン型。口形移動はありません。しかし、日常会話において、一つの語(口形)で終わることは稀で、通常は複数の単語の組み合わせになります。Teaの場合でも、普通は“Tea, please.”のようになるでしょう。後にpleaseが来る場合、口形は子音だけとっても、P-L-Zと次々に口を動かしながら作っていく必要があります。
 
レッスンでは、初級コースでアルファベット26文字の作り方を終えた段階で、五個ずつ繋げて発音練習します。ABCDE, FGHIJ,…のように。これはアルファベットから単語への移行段階で、音の連結を訓練する目的で行うものです。例えば、ABCDEをあたかも一つの単語のように扱い、一息一拍で間を空けずに発音します。その時にスムーズな口形の移動が求められます。私は余興的に時々行いますが、AからZまで一息で発音が可能です。決して早口ではありません。ポイントの一つは口形移動なのです。
 
今年もお陰様で初級コースの開講が決まりました。4月14日からの12レッスンで、各受講者の方がこのスムーズな口形移動の大切さに気づき、それをどこまでマスターできるか、受講生とトレーナーの共同作業がまた始まります。

 <ナガちゃん>

「音声表現」って何?

投稿日:2012年3月8日

わたくしたちの日常生活の中で「音声表現」という4文字熟語は余り見かけないと思います。ところがわたくしどもの初級および中級コースの日程表には必ずでてきます。そしてこの「音声表現」が当塾の異文化対応コミュニケーション訓練の神髄であり、他のことばにはどうしても置き換えられないのです。また、わたくしの場合、何故20数年も塾活動にかかわっているか、その大きな理由の一つに「音声表現」の楽しさと魅力があることも事実なのです。
 
通常4月に初級コースが始まり、最初の一か月半はアルファベットと単語の作り方を中心に学びます。日本語音と英語音の基本的な相違を認識しながら、それを乗り越えて意思疎通ができる音声作りの基礎訓練を行います。表現の訓練に入るのは5月下旬からで、具体的には、与えられた課題詩の中から一つ選び、自ら作る音声でその詩の内容を表現します。すなわちそれが音声表現です。
 
表現に際しては、当然のことながら、自分がどのようにその詩を理解するか、どこに感動し、どのようにそれを聴衆へ伝えたいか、といったことをあらかじめ検討のうえ行うことが求められます。トレーナーが出したコメントやアドバイスを参考に、また、録音した自分の音声を聞いて分析し、表現を工夫していきます。
 
現行のプログラムですと、詩のところは2回のみで次に進みますので、音声表現として実感できるのは、やはり初級コース終盤のスピーチ訓練に入ってからでしょう。ここで取り上げるのは、20世紀を代表する喜劇俳優Charles Chaplin監督主演映画、「独裁者」からのスピーチです。音声としては、日本語には無い、強い息を伴った英語の子音が要となります。3か月半ほどの短期間に鍛錬した音声で、どこまで自分オリジナルの表現が可能か、受講生一人ひとり挑戦します。
 
日本では国会のように、本来は生きた話しことばが力を持つべき場所でありながら、演説というと、あらかじめ用意された原稿を読み上げるだけで、聞いていても面白くありません。日本語でも、また、たとえ原稿が手元にあっても、それに息吹を吹き込めるか否かはスピーカー(演者)にかかっています。未来塾で音声表現力を磨き、異文化を超えて世界へ向けた発信力を高めると同時に、 母語における音声表現力の重要性と可能性にも是非目覚めていきたいものです。  

<ナガちゃん>