ささやきの効果

投稿日:2010年9月29日

ここで言う「ささやき」とは、小声で話すことではなく、息だけを使って話すことと思ってください。それも、かなり強い息を使うとイメージしてください。強さの程度ですが、手のひらを口元にかざすと、そこに貴方の発した息が強く当たって跳ね返る程度のものです。
 
このような強い息だけで、英語の音を次々に発します。試しに、何か文章を読んでみてください。短い会話の文章でも結構です。次に、それを録音してください。録音の機器は、テープ・レコーダーでもMDでも、最新式のICレコーダー等、何でもかまいませんが、条件が一つあります。それは、通常部屋の中で録音されると思いますが、録音機器を貴方から最も遠い所において録音してみてください。
 
実験の結果、再生してみて、息のみの発音状態は如何でしょうか。最初は、何も聞こえないかもしれません。でも、練習を重ねると、少しずつではあっても、息遣いが聞こえて来るはずです。何故このような練習を提案するかですが、それは英語の発声において、息の活用が欠かせないからです。特に子音は息が命です。ところが、日本語を使い慣れている私たち日本人は、声でごまかしている場合がけっこうあるのです。
 
声に頼っていないか、声でごまかしていないか、それを確認するための方法を提案しました。塾の訓練の中でも、よくこの「ささやき」の手法を使って、各受講生に息の存在を確かめてもらいます。かなり有効な手段であり、お勧めです。
 

 <ナガちゃん>

語感の大切さ

投稿日:2010年9月24日

例として“kill”という単語をとります。これをいわゆるカタカナで発音すると、どうなるでしょうか。音声としては、相手を死に至らしめる殺意は全く感じられないものになるはずです。英語での語感作りのポイントは、声の強さでも、まして声の大きさでもありません。勝負は、最初の“k”の子音としての息の強さなのです。
 
語感に敏感な方がいて、“kill”の殺意を出そうとすると、おそらく十中八九、通常の日本人であれば二番目の“i”が声高くなり、上がるはずです。極端な場合、“i”の声の大きさ故に、最初の“k”が全く聞こえなくなる恐れもあります。「イ」ばかり大きく聞こえる状態です。
 
大切なのは、一にも二にも、“k”を強く鋭い息で出すことです。続く“i”は短母音で鋭く瞬間的に作り、語尾の“l”に繋げます。“ll”ですので、“L”二つ分の舌の押さえが必要です。そこでようやく「殺意」が相手に届く、つまり“kill”としての語感が出ます。
 
我が塾の訓練で使うスピーチの定番“Dictator”(*)には、次のような単語が出てきます。
kindness,  gentleness,  perish,  power,  democracy
 
また、現在進行中の中級コ-スでは、Martin Luther King牧師のスピ-チ
“I Have a Dream” を取り上げて訓練を行っていますが、それからもいくつか拾ってみましょう。
difficulties,  justice,  vicious,  hope,  faith,  beautiful
 
これらいずれの場合も、聴衆へスピーチの内容をきちんと伝えるには、各言葉の持つ語感が欠かせませんが、その要求される語感が出るか否かは、90%近く最初の子音にかかっていると言っても過言ではありません。
 
大半の日本人にとって英語は外国語ですが、誰でも訓練を積むことで、英語本来の持つ語感作りができるようになります。
 

(*)“Dictator”は、チャップリンの映画『The Great Dictator(独裁者)』の最後に行われるスピーチのことを指す

<ナガちゃん>

Hで貧血!

投稿日:2010年9月16日

どんな単語も全てアルファベット26文字の組み合わせからなります。
さて、アルファベット26文字中、単語の構成要素として使われた時、最も息を必要とするものは何か? おそらくそれはここで取り上げるHではないでしょうか。Hが入った単語を二三連続して発音すると、酸素(または息)不足から貧血状態が生じて、頭がくらくらすることも珍しくありません。
 
わたしたちの発音訓練では、カタカナに成りやすい単語を集めて、英語の範疇に入るよう練習します。Hで始まる単語も4つ(Hat、Head、Here、Horse)あり、一個ずつ出来るようになると、それら4個をあたかも一つの単語であるかのように、間を切らずに繋げて発音します。HatHeadHereHorseという具合です。「増幅法」といって、わざと大げさに通常の倍の息を使って行いますので、言い終わるとしばしば貧血状態に陥ります。
 
Hは多くの場合、単語の先頭文字として使用されます。下記にHで始まる単語を気儘に書き出しました。何かとても私たち人間界をとりまく営みに関係する言葉が多いと思いませんか。
 
Heaven, Hell, Human, Hair, Hand, Hip, Heel, Heart, Happy, Hate, Hurt, Help, Health, Hospital, Hello, Hope, Humor, House, Home, Hotel, Husband, Hero(Heroine), History, Hot, Heat, Humid, ・・・.
 
息を十分使って、これだけの単語を続けて発音すると、誰でもかなりの貧血状態になること請け合いです。

  <ナガちゃん>

母子分離

投稿日:2010年9月10日

母音と子音を分けること、それが英語の発音の大きなポイントと言えます。未来塾ではそれを「母子分離」と表現しています。日本語では、母音と子音は分かれていません。分かれていないどころか、子音は母音に吸収されるように私には感じられます。ンを除く50音全てが母音のアイウエオいずれかに集約されていきます。
 
たとえば、カキクケコをゆっくり言ってみてください。カ、キ、ク、ケ、コと、語尾を少し伸ばし、母音の部分の音程を上げるようなかたちで発音していませんか。このような時、私には、子音が母音に飲み込まれていくように感じられます。
 
簡単な英語の単語を例にとって「母子分離」とは何か、具体的に見てみましょう。STARという単語を取り上げます。最初の文字Sと次のTは二重子音で、この二つの間には一切母音は入りません。ところが、日本語の干渉を受けて、子音と母音を分ける意識が弱いと、SとTの間にU(ゥ)が入ってきます。「ゥ」が入ると、STAR ではなく、(日本語音の)「スター」に限りなく近くなっていきます。
 
母音と子音を分ける訓練方法として、塾では日本語の50音をロ-マ字表記したものを使います。例えば、KA  KI  KU  KE  KOです。音声としては、子音(K)プラス母音の形、すなわち、K+A、K+I、K+U、K+E、K+Oのようにイメージすると作り易いでしょう。
 
一つずつ、Kと各母音を分けて音を作ります。KAは、K+Aをイメージし、まず息を中心にして、鋭くKを出します。この時発音されるのは子音のみで、一切母音は入りません。出し切ったところでAを付け加える。これもできるだけ息で行います。唇は緩ませずに、口形はメガフォンを保ちながら発音します。
 
ポイントは、子音を単独で作り発声し終えてから、母音を繋げる点です。母音はむしろ短母音と考え、ほぼ息のみで作ります。息の量から表現すると、Ka Ki Ku Ke Koのようになります(子音は母音の倍ほどの分量がある感じです)。音声面から見ると、日本語では子は母に吸収され分離できませんが、英語では母子は分離され各々自立しつつ共存している関係と言えるのではないでしょうか。
 

<ナガちゃん>

息のコントロールを支える腹式呼吸

投稿日:2010年9月1日

未来塾では、息や呼吸だけを取り上げて、専門的に深く掘り下げて訓練することはありません。只、毎回のレッスン開始時に、今体内にある息を出し切り、次に息を深く吸ってお腹に一旦貯めた後、その息に声を乗せて出すということを何回か意識的に行います。発音訓練の準備運動の一環です。準備運動を終えると、毎回、課題に対して、息、声、口形を発音の3要素としてとらえ訓練を進めますが、息については、如何に素早く十分に吸い、体内深くからそれを効率的に出して使えるか、すなわち息のコントロールがポイントとなります。
 
アルファベット26文字の発音を習得すると、多少機械的ですが5個毎にまとめ、あたかも一つの単語のようにして発音します。ABCDE, FGHIJ, KLMNO, PQRST, UVWXYZ といった具合です(最後だけは6文字になります)。これはアルファベットから単語への移行過程での訓練です。この時も、息を下腹深く吸った後、語頭に勢いをつけて音作りを始め、残りの息を等分にして使いながら(「息の配分」という言い方をします)続く4文字を発音し語尾へと繋げます。全体としては5文字を連結させます。
 
アルファベットから単語、そして文へと音作りが進んでも、息に関する要領は基本的に同じです。要領としては、吸って貯めた息を使い切ったら、再び素早く吸いお腹の底に落とし込み、再びそれを配分しながら出し、息に声を乗せて聞き手へ届ける、その繰り返しとなります。私の場合には、この息のコントロールの際にかなり腹筋を使っているようです。といいますのは、ある程度長いスピーチを表現し切った後では、腹筋運動の後のようにお腹の辺りに鈍痛を感じるからです。お腹で支えながら息を使っている、つまり腹式呼吸をしているということだと思います。
 
以上でお分かりのように、息のコントロールとそれを支える腹式呼吸は、英語で音声表現をする際に不可欠のものです。そしてそれは、訓練によって誰でも身につけることができる技でもあるのです。
 
注記:なお、未来塾の発音訓練では常に「息」の大切さを強調しますが、あえて「腹式呼吸」という言葉を多用しません。それは呼吸が「腹式」かどうかということに囚われてしまうことを避けるためです。「腹式呼吸」ができているかどうかよりも、実質的に「息」を十分に使えること、「息」に「声」を乗せて発声できることが重要です。
 

<ナガちゃん>