担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
メガフォン型口形(以下単に「メガフォン口形」)とは、未来塾の発音訓練で使う基本的な口の形で、形状は四角です。口形をつくる上下の唇全体に力が入っていますが、特に左右両脇の引き締めが強いです。メガフォン(拡声器)を正面から見たときの(四角い)形に似ているので、メガフォン型口形と呼びます。楽器のラッパにも似ているので、ラッパ口形ともいいます。未来塾のテキストでは、アルファベット26文字のうち半分以上について、このメガフォン口形を使って音作りをするよう言及されています。
何故メガフォン口形を作るのか、その主目的は、口の両脇の横開き防止です。横開きを制御しない場合、どのような問題が起きるでしょうか。
わたしたち日本人の口元は、欧米人(白色人種)と比べ、肉がたっぷりしているため、例えばアルファベットのEなどを発音すると、口形が横に大きく開いた状態になります。口形が元に戻るまでに時間がかかり、連続的な音作りが容易ではありません。たとえ試みても、テンポがずれ、リズムがくるいます。
逆の言い方をすると、メガフォン口形を作り口の両脇を強く引き締め、横への開きを制御すると、次のようなメリットが得られます。
① 舌力アップ
舌の根に力が入り、英語音が作りやすくなります。例えば、アルファベットTの(舌先と上の歯茎で作る)破裂音を強く出せますし、Rの場合には、舌を巻きあげた状態での音作りがしやすくなります。
② スムーズな口形移動
メガフォン口形を起点として、文章の音声化に必要な連続的な音作りができます。
③ 息の効率的活用
口が必要以上に横に開かないので、息漏れ(息の無駄使い)が防げます。
④ 息と声の方向付け
息と声が前方に発せられるため、相手(聞き手)に届きやすくなります。
メガフォン口形を習い始めた頃、わたくしは自分の唇でメガフォンをつくることに抵抗がありました。いかにも人為的で、しかも形が醜く感じられ、やりすぎると口の形が元に戻らなくなるのではといった恐怖心すらありました。
何時ごろからメガフォン口形への抵抗感が薄らいできたか、よく覚えていません。はっきり記憶しているのは、海外出張先のホテルで、CNN Newsを見ていたときのアジア系女性アナウンサーの口元です。メガフォン口形そのものでした。縦に開きはするものの、横には殆ど開かず一定で、次々と原稿を読み上げていきました。効率よく音作りをするには、特にわたしたち黄色人種のような場合、やはりそれなりの工夫が必要であり、だからメガフォン口形を利用しない手はない、と腑に落ちた一瞬でした。二十年近く前になるでしょうか。
最後に、最近これぞまさしくメガフォン口形実践者?と感じた人について一言。それはSuzan Boyleです。昨年一躍世界的に有名になったイギリスの女性歌手です。彼女が歌っているとき、少なくともわたくしが見た(NHKの)テレビ番組では、口形がメガフォンそのものでした。口を縦には開けるものの、横幅は保持されていて、終始殆ど変わりませんでした。
<ナガちゃん>