担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
1月、3月に久しぶりに体験レッスンを開催しました。初めての試みなどもあり、正直結果に多少の不安がありました。けれども、終わってみたら参加者された方々の熱心な取り組みもあり、短時間にも関わらず、期待以上の成果を得られました。(*)以前とは異なり、対面で本コースを開くことが困難になっているので、その時々の社会状況を見ながら、よりよい未来塾の発音訓練の在り方について今後も考えながら進めていきたいと考えています。
コロナ禍の中、一時はオンラインでのレッスンを模索したこともあり、実際に一度オンラインで体験レッスンをしたのですが、特に初心者の方に対して未来塾の手法をお伝えするには無理があると判断しました。一つには、未来塾の発音習得方法の大きな柱である「増幅法」を十分にお伝えすることができないことです。ITの発達により、オンラインで様々なことが可能になり便利になりましたが、発音訓練のトレーナーの実感として、オンラインではご参加者の「息」を正確にとらえることができなかったのです。「増幅法」では、通じるのに必要な英語音の200%の強さで訓練をするのですが、何が200%かというと、まず「息」です。そして「声」と「口形」です。では、どれくらい息を出せばいいのか、というのは、初心者の方にとってわかりにくいことです。レッスンでは、トレーニー(訓練を受けてくださる方々)が出した息、声、またその時の口形に対して、「現状」と「助言」をトレーナーがコメントという形でお伝えし、それを参考にトレーニーが練習を重ねていって習得する、という過程が欠かせません。これがオンラインでは十分に行うことができない、ということがわかりました。
英語音習得にあたって、もう一つ大切にしているのが集団訓練ということです。これは、トレーニーにとっては、ご自身だけでなくトレーナーや他のトレーニーの音をしっかり聞いて、ご自身の音つくりの情報として利用していただきます。また、トレーナーにとっても、日頃日本語文化の中にどっぷりつかっているので、訓練では、単に独りよがりに「講義」をするのではなく、複数のトレーナーがいることで「客観的な」視点でレッスンが行われているかということを常に意識しているということです。これも、オンラインのレッスンでは十分にできないことがわかりました。
私たち未来塾のトレーナーが、特に初心者の方々にはオンラインでのレッスンをしない、と決めた理由の大きな点2つを述べましたが、この点を譲歩してしまっては、未来塾の訓練の存在意義がありません。基本は変えることなく、社会の状況に柔軟に対応しながら可能性を探っていきたいと考えています。
(*)第1回、第2回の体験レッスンにご参加くださった方が体験記を漫画で表現してくださいました。とても味のある絵とストーリーで、レッスンの雰囲気がよく伝わってきます。ぜひご覧になってください。
「中津燎子の英語未来塾」(体験レッスン)へ行ってきましたレポート:
https://note.com/eigo_hatsuon_s/n/n3c756d3264ab
イノモン
今年も年が明けたと思ったら、もう1月が終わりそうです。時がたつのは本当に速いですね。みなさまお元気に新しい年を開始されたことと思います。
さて、私たち未来塾でも、1月8日に久しぶりに体験レッスンを開催いたしました。ほぼ2年半ぶりの体験レッスンで、というかレッスン自体もコロナ禍に入って以来開催していませんので、トレーナー一同も開催できたこと自体に喜びながらも、かなりの緊張感がありました。
感染対策をしっかり行ったうえでのレッスンでしたが、まだご不安を感じられる方も多いのか、ご参加いただけたのはごく少人数でした。けれども、みなさまが初めての体験に戸惑いながらも熱心に取り組んでくださり、とても中身の濃いレッスンとなりました。
事前にご案内させていただいたとおり、今年は本コースの開催が困難なことから、体験レッスンをこれまでと違った形で行いました。いつもでしたら、本コースの手法をざっと体験いただいて未来塾のレッスンがご自身に合うかどうかを参加者のみなさまにご判断いただくのが目的でしたが、今年は、何度か体験レッスンを行い、毎回のレッスンでご体験いただくアルファベットの音つくりの数をかなり増やしました。回数ごとに異なるアルファベット音を取り入れる予定ですので、何度か参加され、レッスン終了後にご自宅で練習することでかなりのところまでご習得いただけるように工夫しました。
そのため、これまでの体験レッスンでは必ずしもお願いしていなかった鏡と録音機器をご持参いただきました。鏡と録音機器は未来塾の発音訓練には必須のものです。これらを使うことで、ご自身やトレーナーはじめ他の参加者の音声を客観的に聞き、分析しながら「使える」クリアな英語音を作っていくのです。このようにして、単に英語の発音を習得するのではなく、その習得過程自体が、英語の言語文化にあり日本語のそれにはあまりない、「分析的な」態度が自然に身についていきます。これが音の習得にも「異文化対応」の基本的な考え方の習慣の獲得にもとても役立つのです。
参加者のみなさまには違いがお分かりにならなかったかもしれませんが、今回の体験レッスンでは、各アルファベットについて本コースさながらにじっくり取り組んでいただき、丁寧なコメント(*)もお出ししました。それらすべてが録音されていますので、ご自宅で聞き返しながら練習を続ければ、かなりの成果を上げていただけるのではないかと考えています。トレーナー側の希望としては、ぜひ、その結果を聞かせに次回以降の体験レッスンにもご参加され、次のステップにつなげていただきたいと考えています。
次回の体験レッスンは2023年3月5日(日)に開催予定です。
*)コメントについては、こちらをご参照ください。
コメント出しの舞台裏
イノモン
1999年に中津燎子の教え子が塾を引継ぎ、第2期の活動を開始し、おかげさまで20年間、継続することができました。皆様よりのご支援、厚くお礼申し上げます。
この間、日本の社会も大きく変わりました。インターネットが普及し、多くの方がデジタル機器を普通に使うようになりました。訪日観光客も3,000万人を超えました。一方、少子高齢化の流れは弱まる兆しを見せません。
そのような変化も視野に入れながら、2020年は初級コースのスケジュールとカリキュラムの見直しを予定しています。
スケジュールについては、従来、体験レッスンを2~3月に開催し、実際のコースは4~7月において12回の日程で組んでいました。しかしながら、何名かの方より、体験レッスンと初級コース開始の時期は、勤務先での年度の切り替わりの時期と重なり、業務が多忙であるのみならず、異動、担当業務変更等の可能性があり、レッスン参加が困難、あるいはためらうことがあるとの声が寄せられていました。
カリキュラムに関しては、これまで初級コースは全12回のレッスンを組んできましたが、レッスン回数を3回増やして15回とし、増えた時間で以下の項目の実施を検討しています:
⑴ 従来、発声において効果が上がり難かった項目の補強(アルファベット・単語の連続発声、詩の音声発表、等)
⑵ スピーチ対象原稿(詩、スピーチ稿)の読解と討議
⑶ 異文化論(中津の著作を中心として)
全体コースの見直しを踏まえ、本年は体験レッスンを4月、5月に開催します。初級コースが成立すれば、6月から10月の約5ヶ月間をかけてレッスンを実施したいと思います。(従来は4ヶ月間でした)
教材についても見直し、文章とイラストによる説明を充実したものにする予定です。
ご希望の方はまずは体験レッスンにご参加頂きたく存じます。(体験レッスンお申込みページよりお申込みください。)
また、開始までに時間もあり、ここまで述べたような変更を予定していることから、皆様より、あるいは皆様の周囲で興味を持たれた方より質問があれば、丁寧にお答えしたいと思っておりますので、何なりとお寄せください。
本年を含め、今後もご支援、ご指導を頂きたく、なにとぞ宜しくお願いし致します。
4月に始まった未来塾初級コースですが、12回のレッスンを無事終了いたしました。途中お仕事の都合で退塾されたお一人を除き、すべてのトレーニーの皆さんが最後の課題であるスピーチまで熱心に取り組んでくださいました。最後の発表では、これまでつくってこられた英語音でそれぞれの思いを込めたスピーチをしてくださり、私たちトレーナーも感動いたしました。
この後、秋からの中級コースに進んでくださる方、初級で終了される方、それぞれの決断をされますが、英語の発音に関しては、ようやく意識すればつくれるようになった段階の方がほとんどですから、そのままにしておくと、すぐに元に戻ってしまいます。初回からの録音を何度も聞き直し、基本運動なども続けながら、せっかくつかみかけたクリアな英語音のkeep up 、brush upに励んで、音の戸籍[1]をつくっていただきたいと思います。
4月にお伝えした通り、中津燎子の志を引き継いで、私たち中津の弟子が「新生未来塾」を立ち上げて今年は20周年です。多くのみなさんにご受講いただき、ここまで続けてこられたことを心から感謝しています。それぞれが仕事を持ちながら半ばボランティアで続けてきましたが、ほかでは学ぶことができない英語発音習得法を、必要としている方一人でも多くにお伝えしたいという思いでここまで来ました。トレーナーそれぞれも、年齢を重ね、未来塾としてこの手法をいつまで伝え続けられるかはわかりませんが、必要としている人がいらっしゃる限り、頑張りたいと思っています。
秋には中級コースが始まります。初級コースは英語の音づくりと発想法の基礎を学んでいただきました。中級では、さらに明快な英語音を定着させ、英語の発想法で実際に英文を作ってスピーチをしていただく訓練を行います。トレーナー、トレーニー双方にとって初級以上にハードな訓練となります。トレーナーとして、開始までエネルギーの充実をはかって備えたいと考えています。
初級コースの内容とレッスンの様子を少しでもお伝えしたいと4月からシリーズで書かせていただきました。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
<イノモン>
突然ですが、みなさんは「選択的夫婦別姓制度(法務省では「選択的夫婦別氏制度」というそうです)」に賛成ですか、それとも反対ですか。そして、その理由は何ですか?
私たち日本人の多くは普段、あることに対して「それはいいな。」とか「そんなことはないんじゃないかな。」といった漠然とした「感想」はもっても、明確に「賛成」または「反対」の立場を意識してとることはあまりないのではないでしょうか。まして、その理由まで考えることはさらに少ないように思います。
日本の社会でコミュニケーションを行う場合には、お互いが察しあったり、あえて明確に指摘したりすることを避けたりする場合が多いので、ことさら意見や立場を明言しなくても特に問題はないのですが、英語でのコミュニケーションでは立場や意見を明確にする必要が出てくる場合があります。そして、立場を明言したら、その理由も述べなければなりません。
未来塾初級コース第10回目のレッスンでは、前半に音声表現IIの練習をしたあと、「ディベート導入訓練」の三つ目、「賛成か反対か」のカリキュラムを実施しました。前回の「ニューズレポート」と同様に、トレーニーに記事をお配りして、その概要と意見を発表していただくのですが、前回と違うのは、今回は、その記事の主張や内容に対して、明確に「賛成」または「反対」の立場をとって明言することが求められます。そして、その立場に説得性を与えるために理由を述べなければなりません。
記事の概要をまとめるにあたっても、まずご自身の立場を明確に決めると、それに基づいて内容を整理することができると思います。「賛成」なり「反対」なりご自身の主張を支えるのに有効なことを軸に全体を整理し、しかも記事を持っていない聞き手にもわかりやすくまとめることが大切です。また、未来塾の訓練の特徴として、何かご自身と関わらせて意見を述べることが求められます。そうすることで、より説得性が増します。そして、明瞭な音声で、聞き手に分かりやすいスピードで発表します。
今回お配りした記事の中にも冒頭で挙げた「選択的夫婦別姓制度」に関する記事がありました。発表したトレーニーの方は、立場を明確にされ、理由もご自身の体験に基づいた説得力のある説明をしてくださいました。
さて、みなさんは、この「日本は選択的夫婦別姓制度を導入すべし」という論題に対して、「賛成」ですか、それとも「反対」ですか。よろしかったら、どちらかの立場を取って、他人に説明するつもりで、その理由を考えてみてはどうでしょうか?
<イノモン>
先のイノモンのブログでもお伝えしましたが、今回のトレーニーの方々のニューズレポートの発表は、概要は分かりやすい言葉でまとめられ、ご自分の意見をきちんと表明されたものでした。それは、どうしてか? そのことについてお話ししたいと思います。
レッスンの最後にお一人お一人に感想を聞きました。その時、一人の方から「自分の視点で(記事の概要を)まとめていいのですか?」という質問がありました。レッスンの進行役を務めていた私は即座に「結構です。ご自分の視点でまとめていいんですよ。」とお答えしました。なぜなら、「自分の視点」があるからこそ、情報が整理され、記事の内容の大枠が見え、それを受けて、意見が作られるからです。
その質問をされた方は、「自分の視点」だけで概要をまとめると情報が不足、または偏るのではないかと懸念されているようでした。その懸念は無用です。
なぜならば、発表の後に、2分間の質疑応答時間が設けられていて、概要について情報の不足や偏りがあれば、たいていその質疑応答の中で確認されるため、他の聴衆も気づくことができるのです。なお、質問は他のトレーニー1名がその役割を受け持ち、発表内容の不明な点を明らかにすることのみ、というルールです。
「自分の視点」がニューズレポート訓練のスタートです。
私自身が、初めてニューズレポートに挑戦した時の発表は失敗でした。概要は記事にひきずられて、記事の内容を読み上げ、時間切れで自分の意見はほとんど言えませんでした。それは「自分の視点」をもっていなかったからです。
今回のトレーニーの皆さんは「自分の視点」をもって、ニューズレポートに挑戦されたからよい発表になったと思います。
<オサリン>
私たち未来塾のトレーナーが中津燎子から訓練を受けているときに度々聞かされていたことの一つに次のようなものがあります。「英語修得において、発音の仕上がりは50%でもよいが、文化については200%の理解が必要である。」ここで言う文化というのは、もちろん建造物や美術品といったものではなく、言語文化、すなはち、英語における論理性、世界(もの)のとらえ方、その提示のし方、といったような意味です。どんなに発音が良くても、内容 (意見) がなければ、そしてそれをわかりやすく伝えられなければ意味がない、というわけです。そして、それを学ぶために中津が私たちに課したのは、ディベートでした。
ディベートというのは、英語の言語文化におけるエッセンスが凝縮した形でゲーム形式となったものです。すなはち、一つの論題に対して「肯定側」「否定側」の立場に分かれて、議論を組み立て、必要な証拠で裏付けし、聴衆の前で議論して、どちらがより説得性があるかを競うものです。各スピーチには双方に同じ時間が与えられ、しかも短い時間です。その中で、言いたいことを要領よく整理してわかりやすく音声で伝えなくてはなりません。
多くの日本人にとってなじみのないディベートにいきなり取り組むことはハードルが高いため、当時の上級生 (1988~97年頃、未来塾は初級、中級に続いて上級コースもありました) が開発したプログラムが、現在の新生未来塾でも採用している「ディベート導入訓練」です。なお、この訓練は日本語で行っています。
実際のディベートの試合とそれに必要な立論のレッスンは中級で行いますが、初級ではその基礎となるスキルを学ぶために、「Yes/No game」、「ニューズレポート」、「賛成か反対か」のカリキュラムを用意しています。
初級第9回目のレッスンでは、トレーニーのみなさんに「ニューズレポート」に取り組んでいただきました。これは、それぞれ個別に配られる新聞や雑誌の記事についての概要と意見を15分間でまとめ、3分間で口頭発表していただく、というものです。もう少しくだいて言うと、その記事が要するに何を言っているのかをまとめ、自分の意見を形成してそれを聞き手にわかりやすく伝えることです。しかも短時間で準備し、聴衆に届く明快な音声で発表することが求められます。「概要」と「意見」を明確に分けることもポイントです。
発表の際に陥りがちな傾向として、記事に引きずられたり、ただ記事の一部を読み上げたりして「概要」に時間を取られて所定時間内に「意見」を言うことができなかったり、「概要」と「意見」が混ざっていて、聞き手にとって理解しづらくなったりすることがあります。また、そもそも「意見」が形成できない場合もあります。けれども、今回のトレーニーのみなさんは、記事の内容を程よい長さにまとめ、意見も形成されていてわかりやすく伝えることができていました。
<イノモン>
未来塾のレッスンで目指すのは、「スピーチ音」の音づくりです。すなわち、publicな場面で、英語で主張をするときに通用する明快な発音の修得です。初級第8回目から最終回までは、このスピーチのレッスンとなります。題材は、チャーリー・チャプリンが脚本・制作・監督・主演をした1940年のアメリカ映画 ”The Great Dictator” の中の”The Concluding Speech of the Great Dictator”という有名なスピーチです。古いですが、内容が「自由」という普遍的なテーマを扱っているため、発表者自身の主張も込めやすい、ということでずっとレッスンで使用しています。
レッスンでは、導入として「スピーチとは何か」について簡単に説明し、留意点をトレーニーと確認します。興味深いのは、10項目の留意点に書かれていることは、言葉だけで読めば、それほど難しいことではなく、実際一人ずつ順番に読み上げていただいても、特に質問が出るような内容ではありません。けれども、文字面が「わかった」ということだけでは、本当の理解とは言えないのです。書かれている内容に当てはまる体験があること、あるいは、書かれた内容がその通りと感じ、それに応じて自分が変わる、ということがなければ、本当に「理解した」ということにはならないのです。
例えば、留意点の中に「語感やストレスは、人の真似ではなく、すべて自分の判断でつくる。その時、無意識のうちに自分の中の日本語感覚で抑揚を作るので、ここでハッキリとこれまでの訓練で蓄積し、工夫したはずのリズム、母音、子音の分量の割合を念頭において、音をつくりつないでゆく。無意識に声を出せば、必ず母国語になってしまうことを忘れない。」というものがあります。読むだけならば、これまで重ねてきた訓練からして、「ふむふむ」と流し読み、あるいは聞き流すところです。ところが、実際に訓練にはいると、ほとんどすべてのトレーニーのみなさんに、まさにこの通りの症状が出てくるのです。そう、「無意識」にです。文字として英語の文章を見たとたんに、慣れ親しんだ日本語の音、リズム、呼吸で英語を読んでしまう方がほとんどです。これまで一生懸命つくってきた音はどこへ行ったのでしょう?
とはいえ、スピーチのレッスンの第1回目としては、トレーナーとしては想定内のトレーニーの方々の出来ばえでした。これからあと4回のレッスンを通じて、みなさんが日本語のリズムから英語のリズムに移行できるよう、「変われるよう」ともに訓練をしていきます。トレーニー・トレーナー双方に困難を伴う取り組みではありますが、最終回にどのような変化がみられるのか楽しみでもあります。
<イノモン>
未来塾初級コース第7回目では、最初に音声表現-Iの発表に向けてリハーサルを行い、そのあと、トレーニーの皆さんに発表をしていただきました。訓練中は、トレーナーがさまざまなコメントをだしてきましたので、多少混乱しながらも、いざ本番となると度胸が据わって練習の時よりも堂々と発表される方もおられますし、逆にいろいろなことを気にしながら緊張してしまい、本来の良さを出すことができない場合もあります。それでも、みなさん、精一杯取り組んできてくださったので、トレーナーとしてもわくわくどきどきしながら、発表をお聞きしました。
誰でも人前で発表となれば緊張するものですが、ともに練習を重ねてきた仲間の前ですから、緊張と言ってもそれほど深刻ではないかもしれません。けれども、お仕事などで同様の状況になれば、さらに緊張も高まります。そのような時にも、十分に相手に届くクリアな英語の音を出せるように、訓練では増幅法で音づくりをしているわけです。
発表の後は、ほっと息をつく間もなく、英語の発想法を学ぶ第1回目として、Yes/No Gameを行いました。
Yes/No Gameというのは、出題者に対してトレーニーが順番にYesまたはNoで答えられる質問をし、出題者が頭の中に想定している「具体的なものや人」を当てる、というものです。ルールは、間を置かずに質問していくこと、同じ質問はしないことです。
このレッスンの目的は、日本人の英語習得において障壁となり得る、コミュニケーション上の問題点に気づく、というものです。たわいもないゲームのように思えますが、実際にやってみると、普段日本語のコミュニケーションでは気づかない自分たちの特徴に気づくことができます。すなわち、質問をするのに時間がかかる。そもそも質問するということ自体が苦手な場合が多く、適切な質問をすることも得意ではありません。質問を考えることに精一杯で、ほかの人の質問をよく聞いていないので、同じ質問をしてしまう。前に出た質問を生かすことができず、答えを詰めるための有効な質問ができない、など。
これらの点は、ひっくり返すと、すべて英語のコミュニケーションで必要なスキルになります。つまり、英語を話す人たちとコミュニケーションする際に、適切な質問ができて、会話をスムーズに発展させていくことは、自分をアピールすることにつながり、相手によい印象を与えて、良好な人間関係の構築を図ることができます。
また、Yes/No Gameでは、常に「必要な目的に至るには、何がわかっていないのか」ということを念頭に置いて質問する必要があるため、情報の有効な整理法の修得にもつながります。レッスンでは1度しか体験ができませんが、レッスン外でもグループで遊びながらやってみることで、効果的な質問づくりのヒントが得られるかもしれません。
<イノモン>
未来塾初級第6回のレッスンでは、音声表現-Iに取り組みます。前回、文章における音のつなぎ方を学びました。それを元に、今回は表現という要素も加える取り組みに入ります。
題材は16編の詩から、トレーニーが選んだ1編です。選択のポイントは、内容に共感できるもの、そして、自分の不得意な音をあまり含まないもの。
テキストに掲載された16編の詩は、Blowing in the Wind やSingなど、どれも歌として聞いたことがあるかもしれないものばかりです。けれども、レッスンで取り組むのは、もちろん歌としてではなく、これまで未来塾でつくり方を学んできた音で発音していきます。
今回のトレーニーのみなさんも、それぞれご自身が共感できる内容の詩を選んで、「音声表現」に取り組んでくださいました。
新しいことを学ぶときに、全体をより小さな部分に分けて、それぞれの部分を順次習得し、最後にそれらの部分を統合する、という手法が取られることはよくあります。そして、この統合というステップは、思っている以上に困難を伴い、それまでに習得したと思ったことさえも、元に戻ってしまうことがよくあります。未来塾の発音訓練でも、文章の音づくりに入ると、この統合という段階になるわけですが、やはり、英語を文章として発音しようとすると、これまでつくってきた音が崩れてしまい、入塾前の慣れ親しんだ“英語もどき”の音で発音してしまいがちになります。中津燎子は、この症状を「先祖返り」と呼んでいました。トレーニーのみなさんにも、ところどころで「先祖返り」の症状がでていました。
大切なのは、音をきちんとつくりながらも、単語転がし1にならないよう、文章として何が主語で述語部分は何なのかが、聞き手にわかるように発音することです。
音づくりだけでも、これほどの困難を伴いますので、課題の「表現」にまで意識を向けることはなかなか大変です。それでも、音声で表現する、ということに、まずは挑戦し、それを楽しんでほしいな、と思っています。
たとえば、happyという単語を発音するときには、その音を聞いた人にその「幸せな」語感が伝わるように工夫するのですが、そもそも音がきちんと届かなければ、内容も届きません。表現の基本も地道な音づくりにあります。
音声表現の取り組みは、この後、スピーチの訓練をとおしてレベルアップしながら続いていきます。
<イノモン>
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注)1 単語転がし:未来塾用語。文章内の単語を意味の塊として音声でつなげるのではなく、丁寧ではあるが、単語一つ一つを等間隔で機械的に、ごろごろとつないでいく発音の仕方。
<参考ブログ>
「音声表現」って何? https://nakatsu-miraijuku.com/diary/84
表現する爽快感をあじわう https://nakatsu-miraijuku.com/diary/1133