担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
「事実は何か?」その把握が未来塾訓練の主目的だとしたら驚かれますか? でも、一年ほど前のブログ(*1)でご紹介した訓練目的10カ条のうち、5つは事実に関わるものです。曰く「事実の言語化」、「事実の正確かつ公平な他への伝達」等。「事実と意見を分ける」については、このタイトルで単独のブログ(*2)として取り上げましたので、憶えていらっしゃる方もおいででしょう。
当塾の訓練の柱は英語の「発音」と「発想」です。これら両面から鍛えて異文化の壁を乗り越え、Communicationをスムーズに行えることを目指します。事実の把握はそのどちらにおいても重要視されます。まず「発音」面では、例えば鏡を利用した口形の確認の際、自分の口が横に広がり過ぎていないか等を、一つの事実として把握します。「発想」面でも、最初に行うYes-Noゲームでは、出題者に対して「それは・・・ですか?」といった質問を発して事実確認をしていきます。
なぜこれ程「事実の把握」が訓練で求められるのでしょうか。それは他人(異文化)とのCommunicationに当たっては、まず拠り所となるのは事実そのものだからではないでしょうか。事実は何かについて認識しあい、合意ができれば、その共通認識を基に次へ進めます。どうすべきかについて検討開始が可能です。
今日本ではいわゆる原発問題で揺れています。「原発の全面的廃止」か「再開を認める」か。また、自分たちの住むところで「瓦礫処理を受け入れる」か「拒否する」か。昨年世界中で注目を集めた日本人の「絆」も今や揺るぎ始めている感があります。わたくしは日本人同士がこの先へ進み解決策を見いだせるかどうか、そのヒントは冷静な「事実の把握」にあるのではないかと思っています。
少し英語の発音と発想の訓練から外れたと感じられる向きがあるかもしれません。でも、訓練目的10カ条の前文には次の文言を掲げています。少し長いですが引用します。
「我々は地球市民として、あらゆる異文化の人々と共存していくために、よりよいCommunication能力開発を目指す。Communication能力とは、母国語、外国語を問わず、人間として異質なもの、異なった文化(生き方、考え方)にどう対応するか?という能力のこととする。」(下線は筆者)
日本人同士であるか外国人との交渉事であるかに関係なく、事実は何かを把握することが(多少くどくなりますが)異質を乗り越えたCommunicationを成り立たせる第一歩であるという認識がとても大切なことになるのです。
*1 「未来塾10カ条」(2011.4.13掲載)参照