担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
今回の本題に入る前に、まず今年の未来塾訓練についてですが、先日9月17日に初級コースが無事終了しました。東日本大震災のため例年より一ヶ月程遅れて始まりましたが、8名の受講者が全13回のレッスンを殆ど欠席無く参加され、おしなべて高い成果を最終レッスンの発表で披露されました。引き続き6名の方が中級へ進まれます。
さて、今回のブログのタイトルですが、これは、ディベートのありうべき理想的なスタイルとして、亡くなった私たちの師である中津燎子氏が述べていたことばです。ディベートの試合では、あらかじめ決められた論題に対して、肯定側と否定側に分かれて論を戦わせます。試合を経験された方であればどなたでもお分かりのように、やはり試合となると大半の参加者は勝ち負けを意識し、熱くなります。その時の基本的態度として、この「にっこり笑って、ばっさり切る」スタイルを目指すべきだというのです。
通常ですと、試合が進むにつれて両者間のやり取りは、眦を決し声を張り上げ、早口になってきます。その時に、どちらかの論者が「にこやかに」語りかけ、しかし内容は相手側の弱点をついて「ばっさり切る」ことができたとします。どちらのスタイルの方がジャッジや聴衆に好印象を与え、説得力を増すかは言うまでもないでしょう。わたくしが未来塾に入って間もなく、その年の全米大学ディベート選手権で優勝したチームが東京で行った模擬試合を見る機会がありました。デモンストレーションの試合ということもあったからでしょうが、わたくしが最も印象に残ったのは、論者達の笑顔でした。
ディベートの試合そのものではありませんが、やはり中津先生がよく引き合いに出した討論として、かなり古い話になりますが、1960年のアメリカの大統領選挙があります。候補者として、民主党の上院議員J.F.Kennedyと共和党の現職副大統領であったRichard Nixonの間で数回行われたテレビ討論です。この討論は一対一のディベートと言えるもので、聴衆は視聴者です。視聴者に対してKennedyは、彼の若々しさと自信に満ちた姿を印象づけ、その結果有権者の支持を増した一方で、Nixonは逆にマイナスの印象を与えてしまい、この流れが大統領選の投票結果を決めたといっても過言ではないと言われています。
冒頭に述べました中級のレッスンが来週から始まります。柱の一つが(日本語による)ディベートです。今回は6名が参加されますので、3名ずつのチーム構成が可能です。私どもはディベートの手法を利用して、英語の論理的構築を鍛えるのが主眼で、試合そのものはあくまでも手段となります。でも、試合に向けての準備や試合を通して得るものは決して少なくありません。このブログで述べた「にっこり笑って、ばっさり切る」ディベートの理想スタイルも、是非受講生には身につけて欲しいと思っています。