担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
虎は英語でTigerですが、勇猛果敢で野生的な虎になるか、それともいじけた弱々しい虎になるか、そのポイントは何だと思われますか? もちろんここでは英語の発音に限定したお話しとしてです。それは冒頭のTの出来如何にかかっている、とわたくしは思います。十分な息でTの破裂音を作れるかどうかです。
T音の作り方は、舌先を上の歯茎に瞬間的に強く押し当て、鋭い息とともに出します。舌の先で歯茎を強くはじく、と言った方がより適切な表現になるかもしれません。Tigerの場合、まずは子音のTだけを練習し、出せるようになったらigerと連結させてみます。この時、iger部分も息で作ることが肝要です。T + igerであり、決して日本語の「タ」で始めないことです。ご自分の持つ息の80%を最初のTの破裂に、残り20%をigerに使います。単語全体としては、Tから真下に音を落とす感じで作ります。
「タイガー」では野性味のないダメ虎になってしまいますが、冒頭のTに鋭い子音が入ると生き返り、野性味のある強い虎に変身できるのです。
「Tはスピーチを際だたせる」と中津先生はよく言っていました。Tの発音が明快だとそれだけ聴衆を引きつけ、メッセージを伝えやすくなるということです。地名一つでもおろそかにできません。具体例を一つみてみましょう。
“Let freedom ring from Lookout Mountain of Tennessee.”
これはMartin Luther King牧師の有名なスピーチ、“I Have A Dream”の一節です。一番最後にTennesseeがでてきます。このTの発音を、鋭い息を伴った子音で作れると文全体が引き締まりますが、日本語音の「テ」で代用するとどうなるでしょうか。おそらく日本人以外の多くの聴衆にとって、特にアメリカ人の場合には、テネシーはまさかあのTennesseeのことであるとは気付かないでしょう。T音一つで聴衆への届き具合に雲泥の差が生じてしまうのです。