音の戸籍をつくる

投稿日:2010年12月29日

突然ですが、戸籍ってご存知ですよね? そうです。あの「戸籍謄本」の戸籍です。でも、「音の戸籍」って一体何だ?と思われた方も多いと思います。けれどもこれは、未来塾の発音訓練にとってとても重要な概念のひとつなのです。
 
20年近く前に未来塾に入るまでは、私は英語の発音といえば、ネイティブの発音を録音したテープなどを聞いて真似していました。当時は今ほどたくさんの音声教材があるわけではなく、そのような教材のない文章を読むときなどは、辞書にのっている発音記号を頼りに発音したりしていました。
 
たとえば、satisfaction。辞書を引けば、発音は、[sæ`tisfæ'kʃn] などと表記されています。これを見て、私は日本語のサ(sa)、ス(su)、セ(se)、ソ(so)を発音するときの子音の部分である“s”と「アとエの間のような音」をつなげ、同様にタ(ta)、テ(te)、ト(to)の“t”と「イ」をつなげ・・・と「発音記号」を頼りに音を出していました。自分ではそれで、英語の発音をしているつもりでした。けれども、「発音記号どおり」に発音しているにもかかわらず、どう聞いてもネイティブの人の発音とは違う、ということに気づいていました。それでも、なぜなのかがずっとわかりませんでした。
 
実は、違うのは当然のことで、私が“s”と思って発音していたのは、英語の“s”ではなく、日本語の“s”だったのです。
 
未来塾では発音訓練をするのに発音記号は一切使いません。初級では、まずアルファベットを使って英語の「原音」(それぞれの文字が単語や文章の中で表す音)をひとつひとつつくっていきます。先ほどの単語でいえば、最初の文字“s”の原音は確かに、日本語のサ行の「子音」に似ているかも知れませんが、英語の“s”として聞き手に通用するには、日本語の音では到底間に合いません。英語の場合、使う息の量、そしてインパクトが、私の個人的な印象で、日本語の3倍から5倍は強いのです。そのため、訓練では息をたっぷり吸って、メガフォン型口形を作り、一気に鋭い“s”の音を出していきます。
 
このような練習をそれこそ、何百回、何千回としていくうちに、“s”の文字を見ると(あるいは、“s”の音を出そうと思えば)、自然に必要な口形が作れ、必要な量の息で、英語の“s”として通じる発音ができるようになります。このようになったとき、未来塾では、“s”の「音の戸籍ができる」と言っています。
 
英語で使われる音すべてに「戸籍」をつくれば、辞書の発音記号も本当の意味で利用することができ、ネイティブの「真似」は必要ないというわけです。
 

<イノモン>