塾の鉄則、自らへの引きつけ

投稿日:2010年11月3日

今でも忘れません。初級生のとき、ブック・レポートという課題があり、原稿(日本語)を提出しました。所感として末尾に、「21世紀に向けて日本人の真価が問われる」と書いたところ、塾長から短いコメントが朱筆で付され、返ってきました。「21世紀に向けて日本人の真価云々ではなく、あなた自身がこの問題に対しどう取り組み解決していくのか、それを述べるように」といった内容でした。
 
頭に一撃を食らった感じでした。自分をどこか脇に置いて問題を眺めコメントする、そんなアウトサイダ-的な視点からでは相手を納得させ、動かせる所感にはならない、ということだったと思います。日本語であれ、英語であれ、「問題をしっかり整理した上で、自分が当事者だったらどう取り組むのか、十分自らに引きつけて述べることが重要」ということをこの朱筆のコメントは教えてくれました。
 
「自らへの引きつけ」、この視点はその後トレーナーになってからも常に要求される重要ポイントです。受講生が抱える課題は、見た目には共通点もありますが、実際には受講生ごとに違い、対処方法も異なる場合が普通です。トレーナーとしてどうするか。その際に頼りになるのは自分の体験です。初級や中級の時に自分はどうであったかを思い出す。それにより、単なる紋切り型の対処療法に堕す危険を回避できます。
 
現行のカリキュラムには「ブック・レポート」はありませんが、代わりに初級コースの後半に、「ニューズ・レポート」や「賛成か反対か」といった訓練があります。いずれも新聞記事を読み、その内容をまとめて概要として提示、次に、その記事に対する自分の意見を述べます。如何に自らに引きつけた意見にできるかが、一つのポイントとなります。
 
国際的な交渉の場において、日本の存在が希薄であると報道され、わたくし自身もそのように感じることが多々あります。英語が母国語でないといったハンデもあるでしょうが、如何に説得力のある意見を形成できるかが肝要です。普段から社会的な問題に対して、自らに引きつけて捉え、考え、意見形成する訓練を積む必要性を強く感じます。
 

<ナガちゃん>