担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
このたび、私たちトレーナーの師であり、未来塾の顧問である中津燎子の新刊『声を限りに蝉が哭く』が出版されました。前著『英語と運命』でも書かれていた戦争の体験に焦点があてられています。
さっそく読んでみましたが、先生(あえてこのように呼ばせて頂きます)の生の体験が心に迫ってきて、ぐんぐん引き入られるように読み終えてしまいました。
今年初め、未来塾のトレーナー、それにOB・OG数名とともに、先生のご自宅におじゃましました。
先生は、私たちにペチョンカというロシア料理を前日から作ってくださっていて、私たちをもてなしてくださいました。大きなお鍋で大量のキャベツ(確か3個とおっしゃっていたかと思います)とトマト(品種はモモタロウ)、それに上等のステーキ肉(これも美味しく仕上げるコツだそうです)を煮込んだスープ料理で、やさしい味がし、身体が大変温まりました。
体調は万全ではなく、家の中を移動するにもとてもゆっくりしたスピードで動かれていました。それでも、頭脳は相変わらず明晰で、弟子の私たちを相手に、今の日本の英語教育のことや日本がいったいどうなるかなど、鋭い発言や質問をされ、「最後の本」を執筆されている、とおっしゃっていました。
体力、記憶力が衰えてね~、とおっしゃっておられましたが、出来上がったこの本を読むと、あの体調で、よくこれだけの仕事をなさったな~と、敬服します。
暑い日が続き、今年も終戦記念日が間もなくやってきます。私は、戦後生まれです。戦争のことは母からその体験を聞いて、間接的に知っているだけです。夏のこの時期になると、私の母もよく戦争のことを話してくれました。
母は戦争中小学校の4年生でした。東京に住んでいた母は、空襲の恐ろしさを妹と私に語って聞かせました。B29の近づいてくる音を口で真似ました。それは、中津先生が未来塾の訓練中に戦争中のエピソードを話されたときに、やはり爆撃機の近づく音として発していた音と同じでした。
ただ、母の反応は先生とは全く異なり、とても臆病で、防空壕で小さな弟、妹たちと身を潜めて爆撃機が去るのをただ祈るように待っていただけのようでした。田舎をもたない母は2歳下の妹とともに、富山に疎開させられました。
同じ戦争体験でも様々です。でも、戦争が普通の人々の生活を有無を言わせず、踏みにじる、という点は間違いないことです。そのことに対して、長いものに巻かれることなく、冷静に分析し、自分の意見を明確に持ち続けた中津先生に、改めて畏怖の念がわきました。
私も含め、戦争を知らない人たちが人口の4分の3をこえるようになった今こそ、多くの人たちにぜひ読んで頂き、改めて戦争とは何かについて考えていただきたいと思っています。
『声を限りに蝉が哭く』三五館発行、1260円
https://www.sangokan.com/books/978-4-88320-509-7.html
<イノモン>