担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
4年に一度のサッカーのワールドカップ開催が近づいています。それに因んで先日テレビで放映された、アルゼンチン代表の注目選手、メッシの特集番組を見ました。ドリブルで敵の選手をかわしてゴールする姿は、かつてマラドーナがドリブルで5人を抜いてゴールする姿にそっくりでした。
この二人には共通点があります。身長が、メッシは169cm、マラドーナは166cm。サッカー選手としては小柄です。小柄であるがゆえに、高速で走りながら、近づく敵をかわすボールさばきの巧みさが洗練された、ということらしいです。サッカーの勝負を決するのは体格ではないのですね、あたりまえのことかもしれませんが。
さて、未来塾ではアルファベットの音作りという基本部分を終え、いよいよ音声表現のレッスンに入りました。まずは、文章の短いまとまりである「詩」が題材です。“Sing” や “Over the Rainbow” など、誰でもご存知の歌詞10数個の中から一つ選んで、人前で表現します。詩の内容を音声で伝えることがレッスンの主眼です。歌うのではありません。また、暗唱するのでもありません。
そしてレッスンが始まると、受講生の間にとまどいが生じることがあります。期待したお手本が示されないからです。アルファベットから単語までは、トレーナーはガンガン見本の音を発します。ところが音声表現に入ったとたん、お手本なし。コメントのみ。なぜ?
詩は単なる音の羅列ではありません。内容があります。その内容を各自の解釈にもとづいて表現することが求められます。誰の真似でもない、あなた自身の表現です。そう、表現には正解がありません。だからトレーナーは、示したくともお手本を示せないのです。
先に紹介したサッカーの特集番組では、アルゼンチン国民から往年のマラドーナの役割を期待され、スランプに陥ったメッシに、当のマラドーナが次のように助言します。
「私は自分のやれることをやっただけだ。君も君のやれることをやればいい」
どんなに似ているように見えても、人はそれぞれ違っていて、それぞれがせいいっぱい自分の力を発揮することが一番大切。音声表現にも通じる話と思いました。この2ヵ月間で培った発音を使って、せいいっぱい表現してみてほしい。勇気を持って、大胆に。
<ぽんちゃん>