担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
腹の立ったことを人に聞いてもらうことってありますか?
私は友人や家族、職場の同僚に、愚痴も含めて聞いてもらうことがあります。
「腹が立ったの、分かる、分かる」
なんて共感の言葉を言ってもらえると、スーと気持ちが楽になります。
未来塾中級コースのディベート導入訓練では、「腹の立ったこと」というテーマで、日本語による3分間スピーチを行います。「怒りの体験の説明を通して、自分を出す、主張する」ということをレッスンのねらいにしています。
もう20年位前になりますが、私は、職場の上司の無責任な態度を題材に「私の腹の立ったこと」を発表しました。それは、それまでの私の人生の中で一番腹が立った出来事でした。発表しながらもムラムラと怒りがこみ上げてきましたが、なんとか冷静さを保ち、わかってもらえたのではないかと思いながら発表を終えました。
すぐに出されたコメントは次のようなものでした。
「腹を立てている様子は感じられたが、上司の問題点をいろいろと述べているだけで、何に対して怒っているのかよく分からない。」
私は愕然としました。
「こんなに腹を立てているのに、何故分からないの?」
と、ショックを感じ、しまいにはコメント自体に腹を立てていました。
しかし、自宅に帰って頭を冷やし、録音テープで他の人達の発表やそれらに対するコメントを聞き返し、さらに自分の発表を聞いてみると、出されたコメントが的外れではなく、まさに指摘の通りだと思い知らされました。
ディベート導入訓練では、事前に次のような留意点が示されます。
・ 何故腹が立ったのか、何に対して腹が立ったのか、明確にすること
・ 聞き手(自分を知らない人、職場の人や家族ではない)の共感を得るように意識する
これらの留意点を説明され、自分では分かっているつもりでした。ところが、私の発表は言葉できちんと何に腹が立ったのか説明しておらず、家族や友人、つまり身内が分かる程度の情報しか入れていなかったのです。これでは他人の共感を得ることはできません。
「腹の立ったこと」を発表して、私は異文化とはどういうものであるかを少し知ることができました。