『声を限りに蝉が哭く』が出版されました

投稿日:2010年7月29日

このたび、私たちトレーナーの師であり、未来塾の顧問である中津燎子の新刊『声を限りに蝉が哭く』が出版されました。前著『英語と運命』でも書かれていた戦争の体験に焦点があてられています。
 
さっそく読んでみましたが、先生(あえてこのように呼ばせて頂きます)の生の体験が心に迫ってきて、ぐんぐん引き入られるように読み終えてしまいました。
 
今年初め、未来塾のトレーナー、それにOB・OG数名とともに、先生のご自宅におじゃましました。
 
先生は、私たちにペチョンカというロシア料理を前日から作ってくださっていて、私たちをもてなしてくださいました。大きなお鍋で大量のキャベツ(確か3個とおっしゃっていたかと思います)とトマト(品種はモモタロウ)、それに上等のステーキ肉(これも美味しく仕上げるコツだそうです)を煮込んだスープ料理で、やさしい味がし、身体が大変温まりました。
 
体調は万全ではなく、家の中を移動するにもとてもゆっくりしたスピードで動かれていました。それでも、頭脳は相変わらず明晰で、弟子の私たちを相手に、今の日本の英語教育のことや日本がいったいどうなるかなど、鋭い発言や質問をされ、「最後の本」を執筆されている、とおっしゃっていました。
 
体力、記憶力が衰えてね~、とおっしゃっておられましたが、出来上がったこの本を読むと、あの体調で、よくこれだけの仕事をなさったな~と、敬服します。
 
暑い日が続き、今年も終戦記念日が間もなくやってきます。私は、戦後生まれです。戦争のことは母からその体験を聞いて、間接的に知っているだけです。夏のこの時期になると、私の母もよく戦争のことを話してくれました。
 
母は戦争中小学校の4年生でした。東京に住んでいた母は、空襲の恐ろしさを妹と私に語って聞かせました。B29の近づいてくる音を口で真似ました。それは、中津先生が未来塾の訓練中に戦争中のエピソードを話されたときに、やはり爆撃機の近づく音として発していた音と同じでした。
 
ただ、母の反応は先生とは全く異なり、とても臆病で、防空壕で小さな弟、妹たちと身を潜めて爆撃機が去るのをただ祈るように待っていただけのようでした。田舎をもたない母は2歳下の妹とともに、富山に疎開させられました。
 
同じ戦争体験でも様々です。でも、戦争が普通の人々の生活を有無を言わせず、踏みにじる、という点は間違いないことです。そのことに対して、長いものに巻かれることなく、冷静に分析し、自分の意見を明確に持ち続けた中津先生に、改めて畏怖の念がわきました。
 
私も含め、戦争を知らない人たちが人口の4分の3をこえるようになった今こそ、多くの人たちにぜひ読んで頂き、改めて戦争とは何かについて考えていただきたいと思っています。
 
『声を限りに蝉が哭く』三五館発行、1260円

https://www.sangokan.com/books/978-4-88320-509-7.html
 

  <イノモン>

未来塾のカリキュラム:20年前と現在

投稿日:2010年7月20日

わたくしが塾に入った当時(1988.10)のカリキュラム(初級コ-ス)について現在と比べてみます。
 
       <当時>                 <現在>
期間: 10月開講~翌年9月       4月開講~同年7月
時間数: 84時間+α(合宿)         28時間
受講料: 約33万円(合宿費別途)      8万4千円
 
訓練日は現在と同じく週末の土曜日中心で、月一回は中津先生によるものでした。7月末に一泊二日の合宿があり実質的な訓練が終了、1ヶ月余りの夏休みを経て9月初旬に再集合、一年間のまとめ(総括)をして長いコ-スの完結です。中級進級希望者は、塾長のOKがでれば総括のあと受講申込をして、10月からの新たな一年間に備えます。
 
一見してお分かりのように、時間数だけでも当時は現在の3倍をかけていました。カリキュラムの内容でみると、当時の初級はアルファベットの発音からはじめて課題文(詩)まででした。ところが現在は、詩は初級の途中過程でしかなく、スピ-チの課題文(DICTATOR)にまで進みます。以前のカリキュラムでは、二年目の中級半ばまでに行った内容を、現在では初級全28時間の中でやり切るのです。
 
嘗ての未来塾の訓練は、時間的ペースとしては、いわば大河の流れのようにゆっくりとしたものでした。只、受講生にとっては、中身は相当きつく、毎回必死についていく感じでしたが。事実、わたくしのときも、初級の開講時には30名を越す受講生がいましたが、翌年9月の総括時には半分近くに減っていたと思います。
 
11年前の1999年4月から現在の自主運営方式に変わり、カリキュラムは冒頭に示した4ヶ月の短期となりました第一のねらいは、受講生が訓練の全体像を短期間でつかめるようにしたことです。初級を終えると、未来塾で目指すスピ-チ音とは何か、ほぼ見えてくるはずです。また、英語に必要とされる論理思考についても同様で、日本人の弱点がわかるでしょう。
 
塾の自主運営を担当するわたくしたちトレーナー兼スタッフは、各自職業をもち、商業的な利潤獲得を目指していません。コースの短期化で、さらにコストを抑え、その分受講料を低めに設定し、参加しやすくしました。
 
コースの短期化によるマイナス面は確かにあります。時間的な制約のため、たとえば音作りなども速成になります。しっかりと身に付く前に次々と進むので、定着度がどうしても落ちます。いかにして音の定着度を高めるかが課題です。一つの解決方法として、わたくしたちが受講生へお勧めしているのが、初級に続けて中級コースを受講されることです。すなわち初級と中級合わせて8ヶ月60時間ほど連続して参加し、予習と復習を含めて集中的に訓練することで、一気にご自分のからだへ音を定着させるというものです。

 <ナガちゃん>

アップダウン禁止が英語音声の基本

投稿日:2010年7月15日

初級コ-スは全部で12レッスンあります。中頃から文章に入りますがポイントの一つは、目に入ってくる文字を平らに、アップダウンしないで発音することです。別の言い方をすると、大方の受講生はそれまでの英語学習の中で、音読する場合にアップダウン、すなわち上がり下がりをつけて読む癖がついています。

 

英語の文章の音調は、強弱のリズム(ストレス)が中心で成り立ちます。疑問文などで、語尾が上がることはありますが、文の途中でむやみに上がったり下がったりは普通しません。上下する場合は、何か特別の意図があると考えられます。

 

アップダウンとは何か、具体的に次の文で見てみましょう。

 

“The aeroplane and the radio have brought us closer together.”

 

これは、チャップリンの「独裁者」の映画に出てくるスピ-チの一文で、初級の訓練に使います。多くの受講生の傾向として見られるのは、主語のaeroplaneとradioで、下線部分の音声が上がることです。訓練ではそれをトレ-ナ-が指摘し、受講生はひたすら平板に読み進むよう練習します。

 

この下線部分で音が上がったときに、もしそれを放置するとどうなるでしょうか。これまでの私たちの経験で言えることは、このアップダウンの音調がその後の文章を読み進む中で、間違いなくほぼ一定の間隔で繰り返されます。その結果、英語本来のリズム作りが難しくなります。

 

まずはアップダウン無しで平板に読む、その訓練を徹底して行います。

<ナガちゃん>

「チェンジ」で変革は起こせない

投稿日:2010年7月6日

参院選が近づいてきました。選挙と言えば、国は違いますが、二年前のあのオバマ旋風を未だ憶えていますか。テレビの画面を通して、私たち日本人の視聴者も”Change”とか”Yes, we can.”といった言葉をよく耳にしました。

 

changeはカタカナで表記するとチェンジとなりますが、音声上はこの両者間にかなり隔たりがあると言わざるをえません。特に冒頭のchの部分ですが、changeではかなり強い息を伴った子音が要求されます。この冒頭の子音が足りないと、change(変革)の実現に自信がないものと聴衆には受け取られてしまう可能性大です。

 

chの発音ですが、カタカナの「チ」に比べ何倍も強い息の量で出します。また、その際重要なことは、作るのは子音のみで、母音は一切無しという点です。このchの破裂が出来てから初めて次のaの母音に繋げます。chで生じた激しいエネルギ-を利用して、一気にa→n→geへと至ります。音はあくまで下げます。

 

未来塾のテキストには、カタカナになりやすい単語が27グループ108個まとめて掲載されています。その中にchで始まるグループもあり、4つの単語が載っています。child, church, chair, cheeseです。changeはありませんが、この4つの単語の発音訓練を通して、chの強い子音が出せれば、勿論changeに応用が利きます。

 

さて、先の米大統領選挙期間中に連呼された感じのchange、オバマ大統領の就任演説で何回使われているかカウントしてみました。意外に少なく2回でした。その代わりChで始まる他の言葉を見つけました。challenge, chance, choice (chosen)。いずれの単語もchの鋭い破裂が欠かせません。その鋭い破裂があって初めて、演説内容の実現に向けて(話者の)強い意志や覚悟を聴衆に対して示せるのです。

<ナガちゃん>