担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
トピック・センテンス(topic sentence)とは、「話しの論旨」とか「論文の要旨」を普通意味します。この解釈を少し広げることになるかもしれませんが、今回のブログの主張点は、何かの議論に参加し発言する時は、これから自分の述べたい内容の最重要事項をトピック・センテンスとして作り、それをできるだけ話の冒頭にもってきて展開すると聞き手が耳を傾けてくれ易いということです。
よくテレビやラジオの定時ニュースで、アナウンサーが冒頭でこれから伝えるニュースの主要項目(Headlines of the news)を述べてから、その後に個々の内容を報道しますが、これら主要項目も各ニュースの要旨紹介という意味でトピック・センテンスと言えるでしょう。視聴者はそれを聞き、念頭に置いて安心して詳細報道に耳を傾けられます。
トピック・センテンスの具体的な例を見てみましょう。
音声表現の課題文の一つに“Dictator”があります。初級コースの最後に、各受講生はそれまでに鍛えてきた発音と表現技法を駆使してこのスピーチを発表します。冒頭部分は次の通りです。
“We all want to help one another. Human beings are like that.”
およその意味は「人間は誰しも皆、互いに助け合いたいと望んでいる。人間とはそうしたものなのだ。」
この短い二つの文は、後に続く約5分半のスピーチ全体のトピック・センテンスになっているとわたくしは思います。性善説に立って、人間の本来有する善良さと人類愛を信じ、鼓舞し、悪を滅ぼし、科学の進歩が全人類の幸福に繋がるような理性が勝った世界の実現を謳い上げ、最後を“Soldiers, in the name of democracy, let us unite!”で締めくくっています。
さらに、わたくしが実践した例をご紹介しましょう。
かつて中津先生が(当塾の前身である)東京未来塾の主宰者だった時に、中津研修という講座が、トレーナー見習い者を含めた上級生向けに月一回ありました。午前10時から昼までの2時間、先生が殆ど一方的にその時々のテーマでお話をされます。一方的とはいえ、適宜われわれに質問を発し、また意見を求めたりされました。それに対応するため、わたくしが最も意識したのがトピック・センテンス作りでした。
例えば、「先生、その文化の壁についてですが、昨日地元の自治会に出席していて、こんな経験をしました。それはわれわれ日本人にとって、質問すること自体とても大変なバリアを超えなければならないと言う事実です。」この後、具体的な説明に入るといった具合です。この下線部分がここでのトピック・センテンスになるでしょう。
未来塾のレッスンでは、初級コースの段階から「ディベート導入訓練」と名付けて、事実説明や自分の考えの表明を、聞き手にできるだけ伝わりやすく行う術(すべ)を学んでいきます。トピック・センテンス作りもその一つです。