担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
アメリカ大統領Abraham Lincolnの名前は、日本でも殆どの人が知っていると思います。でも、このLincolnの綴りと発音に関して、語尾から二つ目のL(最初のLではありません)が発音される場合があるのは、あまり知られていないのではないでしょうか。わたくしも未来塾に入る前は、このLは完全なサイレントで、発音しないものとの理解でした。
次のエピソードは、塾長であった中津から直接聞きました。アメリカでタクシーに乗ったとき、行き先(Lincoln Centerであったか)を運転手に告げると、即座に「お客さん、今(二つ目の)Lを発音してたね。」との反応が返ってきたというのです。
これを聞いて、わたくしは二度驚きました。一度は、二つ目のLが発音される場合があること、もう一つは相手が即座にそれを聞き分けたという事実です。後者については、中津先生の発音がそれだけ明快であった証しでもあると、今にしては思うのですが。
単語の中で、サイレントと思われている文字が、蘇って発音されるケースは他にもあります。初級コースの中盤で、“Solomon Grundy”というマザーグースを取り上げて練習しますが、その3行目は次の通りです。
Christened on Tuesday.
冒頭のChristenedですが、中程にある T は普通発音されません。ところが、わたくしたちの訓練ではあえて発音します。主な理由は、このわらべ歌のリズムを作りやすくするためですが、副次的には、未来塾の発音訓練の根幹である音作りの実践でもあります。すなわち、(単語を構成する)各文字が持つ音を、口と舌と唇を含めた自らの器官を使い、省略や消去をしないで過不足無く作るということです。
このブログでは、LincolnとChristenedの二つだけ紹介しましたが、サイレントの文字が実際には発音される例は、他にもあるかもしれません。音を省く、消す、曖昧にするといったことは難しくありませんが、聞き手に的確にコミュニケートできる明快な音作りのためには、たゆまぬ鍛錬が必要です。一つの文字の音声化もゆるがせに出来ません。でもわたくしは、このような音作りの努力は他者との意思伝達に必ず役立つし、またいざというときには身を助けてくれると確信しています。