担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
未来塾のレッスンで目指すのは、「スピーチ音」の音づくりです。すなわち、publicな場面で、英語で主張をするときに通用する明快な発音の修得です。初級第8回目から最終回までは、このスピーチのレッスンとなります。題材は、チャーリー・チャプリンが脚本・制作・監督・主演をした1940年のアメリカ映画 ”The Great Dictator” の中の”The Concluding Speech of the Great Dictator”という有名なスピーチです。古いですが、内容が「自由」という普遍的なテーマを扱っているため、発表者自身の主張も込めやすい、ということでずっとレッスンで使用しています。
レッスンでは、導入として「スピーチとは何か」について簡単に説明し、留意点をトレーニーと確認します。興味深いのは、10項目の留意点に書かれていることは、言葉だけで読めば、それほど難しいことではなく、実際一人ずつ順番に読み上げていただいても、特に質問が出るような内容ではありません。けれども、文字面が「わかった」ということだけでは、本当の理解とは言えないのです。書かれている内容に当てはまる体験があること、あるいは、書かれた内容がその通りと感じ、それに応じて自分が変わる、ということがなければ、本当に「理解した」ということにはならないのです。
例えば、留意点の中に「語感やストレスは、人の真似ではなく、すべて自分の判断でつくる。その時、無意識のうちに自分の中の日本語感覚で抑揚を作るので、ここでハッキリとこれまでの訓練で蓄積し、工夫したはずのリズム、母音、子音の分量の割合を念頭において、音をつくりつないでゆく。無意識に声を出せば、必ず母国語になってしまうことを忘れない。」というものがあります。読むだけならば、これまで重ねてきた訓練からして、「ふむふむ」と流し読み、あるいは聞き流すところです。ところが、実際に訓練にはいると、ほとんどすべてのトレーニーのみなさんに、まさにこの通りの症状が出てくるのです。そう、「無意識」にです。文字として英語の文章を見たとたんに、慣れ親しんだ日本語の音、リズム、呼吸で英語を読んでしまう方がほとんどです。これまで一生懸命つくってきた音はどこへ行ったのでしょう?
とはいえ、スピーチのレッスンの第1回目としては、トレーナーとしては想定内のトレーニーの方々の出来ばえでした。これからあと4回のレッスンを通じて、みなさんが日本語のリズムから英語のリズムに移行できるよう、「変われるよう」ともに訓練をしていきます。トレーニー・トレーナー双方に困難を伴う取り組みではありますが、最終回にどのような変化がみられるのか楽しみでもあります。
<イノモン>