担当しているトレーナー達が、訓練や日常の中で気づいたことを綴っていきます。
ここでいう「つぶやき」とは、今流行のツイッターのことではありません。また、野村(前)楽天イーグルス監督が捕手として活躍した現役時代に、「次は内角カーブかな」などと相手チームのバッターの耳元でわざと独り言を放ち、心理的に攪乱したような、つぶやきのことでもありません。文章を作成する際に、黙って書き進むのではなく、声に出しながら作成する、その時に出すつぶやきのことです。
中津先生が米国に留学した際に、ある日、英作文の授業を受けますが、その時にクラスメートの多くがブツブツ音を発しながら文章を作成するのを見て、とても印象深かったようです。塾の訓練時に、何回かそのときの光景について言及された記憶があります。
では何故、英作文の授業の参加者はブツブツ発音しながらやっていたのでしょうか。それは、つぶやきの効用と直結するのですが、主に文のリズムを整えるためであったと思われます。逆の言い方をしますと、口に出しながら行うことで、自分の書いた文がどのくらいリズミカルかを自分の耳を利用しながら、客観的にチェックできます。必要な修正を施し、再度チェック、それを繰り返し行って、よりよいものにしていくことが可能です。特に、書く文章がスピーチの草稿である場合には、聴衆は通常原稿を持たずに聞きますので、リズミカルで聞き易い、理解し易いものであることが不可欠です。
それでは日本人が、外国語である英語で文を作る際にも、つぶやきの効用を享受できるのかとの疑問がでてくるかもしれません。わたくしは、外国語であっても、つぶやきの効用は十分に受けられると確信します。ことリズムの善し悪しに関しては、母語か外国語かに余り関係なく捉えられるのではないでしょうか。そのためには、普段から良い文章に接し、その音読を通して文のリズム感覚を研ぎ澄ます必要があります。良い文章の例として、塾の訓練で使う課題文、すなわちDictatorやI Have a Dream はお手本になるに違いありません。
Martin Luther King Jr. 牧師は一晩でI Have a Dream の原稿を書き上げたと聞きます。恐らく、夜を徹してつぶやき作業を行い、20世紀を代表する一つの作品を作り上げたのではないかと推測するのです。