中津先生のコメントの衝撃

投稿日:2016年3月1日

それは未来塾が以前、10か月かけて行われていた初級コースのカリキュラムにあったブックレポート訓練で出されたコメントでした。

ブックレポート訓練とは、日本文化または日本全般について書かれている本を選び、本の概要と自分の意見を分けてまとめ、5分で、日本語で口頭発表する訓練です。現在の未来塾では、これと同じ訓練は行っていませんが、目的を同じくする訓練として、ニューズレポート訓練(後述)をカリキュラム化しています。

1986年、この訓練を初めて受けた私は、他の受講生に対する口頭発表後の中津先生のコメントを今でも覚えています。それは私が準備した発表内容にも通じるものでした。

「あなたのおっしゃりたいことが、分かりません。誰か通訳して!!」

このコメントは「意見」の部分に対してでした。発表者は、「著者の意見に同感」と一言で済ましていました。「自分の意見」と「著者の意見」とどの点が、どれくらい賛同できるのかという説明がありませんでした。だから、中津先生にとって発表者の意見は“全く分からなかった”のです。この中津先生の「分からない理由」が理解できたのは、後になってからですが。

当時、このコメントを聴いた私は、体全体で衝撃に近いものを感じ、頭が真っ白になりました。何故ショックだったのか?? それは、自分は紛れもなく日本人であるにもかかわらず、母国語である日本語で説明したことを分かってもらえない、つまり自分を否定されたように感じてしまったのです。

私はこのショックからすぐには立ち直れませんでしたが、自分の発表の順番が来たとき、なんとか自分の言葉で、「意見」をひねり出しました。先生から「分からない」というコメントは受けませんでしたが、概要が整理不足なので、発表のやり直しをすることを勧められました。

このような、つまり自分を否定されたようなショックを受けたのは私一人だけではなかったようで、ご本人に確認はしていませんがブックレポート訓練を境にコースを止める人もいました。その後、私はこの時の自分を冷静に受け止め、未来塾の訓練を続け、中津先生の「分からない」というコメントの理由を理解することができました。

中津先生亡き今、先生のコメントはもう聴けません。しかし、初級コースの日本語ディベート導入訓練のPART 1、ニューズレポート訓練———新聞記事を読んで、記事の概要とそれに対する自分の意見をまとめて3分で発表する———の下記狙いに、中津先生が日本人に必要と思っていたことが反映されています。そんなことを改めて思い返して、今年、初級コースが開講できるといいなあと願っています。

他人でなく、自分で考えた意見をだす。

<オサリン>