体格の相違から来るのか、どうも呼吸量が圧倒的に違うのである。
私は不思議に思ってよく考えてみた。そして西洋人種は概ね、腹式呼吸であり、日本人は概ね胸式呼吸か、あるいは浅い腹式呼吸である事に気がついた。
もちろん個人差はある。西洋人種が全部腹式呼吸だから呼吸量が多いのか、それとも体が大きいから呼吸量が多いのか、それについてはよくわからない。少なくとも日本人が英語を基準並みに発音しようとすると、呼吸量は腹式でやらないと常に不足の状態がつづく事になる。日本人は胸式呼吸だと決めてしまう事も又個人差があるから、そうも言えないが、一般的に何式であろうとなかろうと呼吸量が少い事は確なのだ。
発声時の呼吸のズレに加えて基本呼吸量が少ないと、どういうトラブルが起るか、といえば、真先に破裂音がおかしくなる。
私はこの破裂音と言う言葉についての定義をふつう英語を習ったと言う人々に聞いてみた。誰もこの「破裂音」をほんとの破裂と関係づけていなかった。しかし、この音はこの言葉通りの破裂した時の強烈な音なのだ。破裂した音だからそういう名であって、そうでなければ単なる「音」であろう。
この破裂音に必要な呼吸量をふつうの日本女性で出せる人は珍しいが、男性の場合はちょっとした訓練で出来るのは、男性はだいたい腹式呼吸であるかららしい。ただ唇のまわりの筋肉のやわらかさは女性にかなわないので、小回りはきかないが、ドスのきいた発音になる。
色々個人差があるのを一括して平均すると、結論は「日本人は英語を発音する時は腹式呼吸で出した方が呼吸量が多いので楽だ」と言う事である。
<著作「呼吸と音とくちびると」15頁より>