日本式流暢英語が通じないのは?【中津燎子のエッセイ】

日本観察日記

『視覚型言語』と『聴覚型言語』では大違い

英語もロシア語もフランス語も音声言語、聴覚型言語である。
そして日本語は視覚型言語である。この二つの種類の違いが、最後の最後まで皆さんを揺さぶることになっていると思います。英語を習わなければ、そのことについては何にも気がつかなくて、そのまんま幸せに生涯を終えられると思うんですけれども、英語を、英語でなくてもフランス語でもドイツ語でも外国語をやったらこの差に嫌でも気づかなきゃならない。それを教えるのが訓練士=トレーナーの役目なんです。

まず日本語は音声型言語ではない、どちらかといえば視覚型言語なんです。
読んで鑑賞する、読んで味わう言語なんです。その分野において日本語はそれなりに芸術的な言語で、古くもあり歴史もあり奥行きも深いんです。ところが、英語を含めた横文字、ロシア語もそうなんですが、音声というものが主体となって構築された言語なんですね。私ロシア育ちですので、いつもロシア語に帰っちゃうんです。特にロシア語の場合は非常~に古くて、音声に無数の例外が出てきて一筋縄ではいかないんですけれども、音の数が日本語の数倍あるそうです。私の聞いたところだと、英語は日本語の倍、ロシア語は英語の3倍、と言う風に言っているんだそうです。

日本語が横文字の言語とはっきり違うのは、とにかく視覚型である、黙って読むということでひとすじ軸があるんですね。ところが普通の横文字の国というのは、いわゆる西洋の国というのは、声に出してなんぼなんです。この差は大きいですよ。だから音に対する心構えって言うか、覚悟が全然違うわけです。

まず聴く態度に違いが出てくる、音を捕まえる捕まえ方に出てくる、すべてにそういう風に出てくる。『聞き逃さない』っていう洗礼を受けながら育ちますので。ところが日本語で育ちますと、『聞き逃さない』という覚悟を皆さん今まで持たされたことがあるでしょうか。多分この塾に来てうるさく言われたんじゃないかと思うんです。それほどの違いがあるところからスタートしなければならないので、まずはどこがどう違うかということを、ひとまずわかってほしいんです。

<訓練時の発言(2002/5/25)より>