日本式流暢英語が通じないのは?【中津燎子のエッセイ】

日本観察日記

日本式流暢英語が通じないのは?

日本式流暢英語が通じないのは?

私は、バイトでよくあちこちの家庭で子守りをやったが、三つ四つの子供たちが、
「ギ、ミイキャンディー(あめちょうだい)」
とやって来るのに対して、お母さんが、
「GIVEよ。VE、って言いなさい。GIVEのVEがぬけてるよ」
と しつこく教えていたのを思いだす。つまり、幼児はGIVEの、ギ、だけを発音して、ヴ、をやらないでミイの方へ行くのを、はっきりGIVEと言わせていた わけだ。中流の家庭では、全く、きちんと音をしつけ、学校に行ってもやはり基本をしつける。はじめから省略などとんでもなかった。

日本人の英語の発音の多くがなかなか通じない理由にはあまりにこの省略が多すぎて、文章全体の形や意味に影響が出ているからではないだろうか。何しろ奇妙な 流暢さである。英米人でもこんなに流暢ではない。ちゃんととめる所があり、強弱がある。勝手な都合で省略はしないのがふつうである。

外人教師の殆どはこの日本式流暢英語に対してはお手上げで、あきらめきって居り、自分たちの耳をいかにその方にならすか、1インチでも1センチでも多くならす事が出来た事をほこる、と言う方向に傾斜しているようだ

<著作「なんで英語やるの?」274頁より>