日本式流暢英語が通じないのは?【中津燎子のエッセイ】

日本観察日記

『パジャマ英語』と『スピーチ英語』

英語と日本語が言語文化として天と地の差があるのは、英語というのは明けても暮れてもスピーチなんです。
それは自己が確立されていて、その自己を他へのアピールするのが英語の基本となっています。そのための言語なのです。英語の向こうに人間がいて、その人間が自己をもっていて、持っている自己をいかに快く効果的にアピールするか、という文化なんですね。

英語の中のスピ-チ文化っていうのは、正装した、よそ行きのお座敷着でスピ-チする、これが本体。茶の間でパジャマのままひっくり返って喋っているのは、日本の英会話学校でやられている英語の発音なんです。同じ会話体の発音でも、少なくとも公職に就いた人達は、テレビでもそうですけれども、くしゃくしゃ言わないわけです。必ず音が違うんですね。

私は言語学者ではないので、自分で後から気がついたんです。私自身は朝から晩まで英語で仕事をして、何かを上司に報告する時には公の音でやらなきゃならない。「あのな~」なって言えない。
“Hey! You,look!” なんて言えないわけですね。
“I want to make my report.”、ちゃんと言わなくちゃいけない。
そういう音の作り方っていうのがニ通りあるっていうことを知らないのか、まだ日本人は、大事なところでパジャマやネグリジェって感じでものを言うんです。

大学生くらいになれば、みんな英会話くらいやってるんです。たまたま1年間AFSでアメリカへ行って、スピ-チまで届くゆとりはなくて、全部お茶の間のいわゆるパジャマ英語で過ごしてきて「通じた!」とやってるわけですね。これちょっと、21世紀に間に合わないのでやめて欲しい。いや文字通り、老婆心。そういうパジャマ英語はちょっと危ないのでやめて欲しい。

<講演会“中津燎子の異文化サバイバル 第4回 「子供と英語 Part1」” (2001/5/26)より>