「音声表現」って何?

投稿日:2012年3月8日

わたくしたちの日常生活の中で「音声表現」という4文字熟語は余り見かけないと思います。ところがわたくしどもの初級および中級コースの日程表には必ずでてきます。そしてこの「音声表現」が当塾の異文化対応コミュニケーション訓練の神髄であり、他のことばにはどうしても置き換えられないのです。また、わたくしの場合、何故20数年も塾活動にかかわっているか、その大きな理由の一つに「音声表現」の楽しさと魅力があることも事実なのです。
 
通常4月に初級コースが始まり、最初の一か月半はアルファベットと単語の作り方を中心に学びます。日本語音と英語音の基本的な相違を認識しながら、それを乗り越えて意思疎通ができる音声作りの基礎訓練を行います。表現の訓練に入るのは5月下旬からで、具体的には、与えられた課題詩の中から一つ選び、自ら作る音声でその詩の内容を表現します。すなわちそれが音声表現です。
 
表現に際しては、当然のことながら、自分がどのようにその詩を理解するか、どこに感動し、どのようにそれを聴衆へ伝えたいか、といったことをあらかじめ検討のうえ行うことが求められます。トレーナーが出したコメントやアドバイスを参考に、また、録音した自分の音声を聞いて分析し、表現を工夫していきます。
 
現行のプログラムですと、詩のところは2回のみで次に進みますので、音声表現として実感できるのは、やはり初級コース終盤のスピーチ訓練に入ってからでしょう。ここで取り上げるのは、20世紀を代表する喜劇俳優Charles Chaplin監督主演映画、「独裁者」からのスピーチです。音声としては、日本語には無い、強い息を伴った英語の子音が要となります。3か月半ほどの短期間に鍛錬した音声で、どこまで自分オリジナルの表現が可能か、受講生一人ひとり挑戦します。
 
日本では国会のように、本来は生きた話しことばが力を持つべき場所でありながら、演説というと、あらかじめ用意された原稿を読み上げるだけで、聞いていても面白くありません。日本語でも、また、たとえ原稿が手元にあっても、それに息吹を吹き込めるか否かはスピーカー(演者)にかかっています。未来塾で音声表現力を磨き、異文化を超えて世界へ向けた発信力を高めると同時に、 母語における音声表現力の重要性と可能性にも是非目覚めていきたいものです。  

<ナガちゃん>