耳が肥える

投稿日:2011年8月5日

いきなり私的なことで恐縮ですが、わたくしが未来塾の訓練を受け始めてから約23年が経過します。もし今「得られた一番大きな成果は何でした?」と問われれば、迷わず「耳が肥えたこと」と答えるでしょう。音に対する分析力が鋭くなった(自画自賛になりますが)と思うからです。よく授業中にも受講生に対して言いますが、「あなたの日本語(英語)を聞けば、今どのくらいお腹がすいているか、当てることすらできますよ」と。もちろん半ば冗談ですが、残り半分は本気でそのように思っています。
 
個人差はありますが、訓練を始めて数ヶ月たつと(真剣に取り組んでいることが前提です)、やたらに周囲の音、特に人の話し声が気になりだします。例えば、
テレビでニュースを伝えるアナウンサーの声、駅や鉄道車内での音声による案内や乗客の会話、等々。
 
教室での訓練時や録音テープを聴いている時、自分の発する音声についてはなかなか客観的に把握できませんが、他人の音、すなわちトレーナーや自分以外のトレーニーが発する音は、比較的冷静に捉えられるようになります。たとえば、初級コースの後半で使うスピーチに次の一節があります。
 
“In you!  You, the people, have the power—the power to create machines.  The power to create happiness!  You, the people, have the power to make this life free and beautiful—to make this life a wonderful adventure.”
(チャップリンの映画「独裁者」より)
 
この中には、Pで始まる単語がpeopleとpowerの二つあり、前者は2回、後者は4回出てきます。これら二つの単語に関して、発音のポイントは冒頭のPの破裂が出せるか否かにかかりますが、同じ人がこのスピーチをやっても、出来具合は同じにはなりません。最初のpowerのPは破裂が出ていたが、二番目と三番目は破裂不足、そして最後のpowerは程々の出来、といったようなことがしばしば起こります。
 
このような音の違いを耳で捉え、瞬時に分析できる力が訓練過程で養われます。すなわち耳が肥えるのです。最初から特別の聞き分け力がなくても、目的意識をもって日々研鑽すれば、これまで述べた「耳が肥える」実感は誰にでも訪れると言えましょう。
 

<ナガちゃん>